人手不足が加速している日本において、「週休3日制の正社員」や、転勤のない「地域限定社員」、働く場所を問わない「リモートワーク」など、働き方や雇用形態は非常に幅広く多様化しています。
紹介予定派遣とは、一定の派遣雇用期間を経て正社員雇用への切り替えを目指す雇用形態の一つです。派遣先企業にとっても求職者にとってもメリットが多く、取り入れる企業が今後ますます増えていくでしょう。
今回は、「紹介予定派遣業をはじめたいので相場を知りたい」「紹介予定派遣って手数料が多いイメージだけど、どのような仕組みなんだろう?」といったお悩みをお持ちの方向けに、紹介予定派遣の手数料について解説します。よくある疑問点についてもピックアップして紹介していきますので、最後まで読んでしっかりと理解していきましょう。
紹介予定派遣とは?仕組みは?
紹介予定派遣の仕組みには大きく3つの特徴があります。順番に理解していきましょう。
面接がある
1つ目のポイントは、面接があるという点です。
紹介予定派遣は最長6ヶ月の派遣期間を経て、ゆくゆくは直接雇用への切り替えを目指す働き方です。そのため、直接雇用を前提とした面接を行い、合否判定もされることになります。
スキルや経験だけではなく派遣先の社風に合っているかなど総合的に判断されますので、正社員やアルバイトの面接と同じように緊張感を持って臨むことが重要です。合格率を上げるためにも、事前に求職者の志望動機や派遣先の業務内容を確認しておき、面接練習をしておくことをおすすめします。
6ヶ月の試用期間がある
2つ目のポイントは6ヶ月の派遣期間があるという点です。
6ヶ月間は、派遣会社を雇用主として、賃金の支給や福利厚生の付与などを受けます。派遣社員は最長6ヶ月、派遣先から業務上の指示・命令を受けながら働きます。その後、働き方やスキル・勤務態度などを踏まえて問題がなければ直接雇用へと切り替わります。
注意が必要な点は、直接雇用時には正社員だけではなく契約社員やアルバイト・パートに切り替わる場合もあります。企業の状況や派遣社員の能力により、時には派遣社員のときよりも給与が下がるケースもあります。
直接契約時に条件の擦り合わせは必ず行われますので、派遣社員だけではなく派遣会社も細部まできちんと確認してみてください。
人材派遣料と人材紹介料がかかる
3つ目のポイントは紹介予定派遣では派遣料にプラスして紹介料が発生する点です。紹介予定派遣は、6ヶ月の派遣期間に派遣としての給与が派遣先企業から派遣会社に支払われます。
その後、直接雇用の際に、人材紹介料という手数料がかかります。想定年収の20〜30%の金額が派遣会社に支払われることになります。
想定年収とは、派遣社員が年度初め〜年度末まで在籍していたと仮定する時の年収額です。他の雇用形態にはない特殊な仕組みなので、できちんと理解しておきましょう。
紹介予定派遣と正社員の違い
紹介予定派遣と直接雇用の正社員の違いは、派遣期間が設けられていることです。派遣期間の間に職場の雰囲気をつかめるため、業務内容について一通り理解しやすくなります。
また、派遣会社のサポートで研修を受けることができるケースもあります。派遣期間の間にスキルを磨くことで正社員雇用への可能性をあげられます。
派遣会社と協力しながら直接雇用を目指すことができるという点で、経験が浅い方やいきなり正社員雇用は不安だと感じる求職者にも挑戦しやすくなります。
雇用・手数料
紹介予定派遣は、一般的に通常の正社員採用よりも面接のハードルが低く設定されている企業が多いです。そのため、比較的受かりやすいといえるでしょう。
直接雇用に向けて業界の勉強をしたり、資格を取得したりと前向きな姿勢を面接でアピールすると良いです。
直接雇用へ切り替える際に手数料が発生するため、派遣先にとっては正社員よりもコストがかかります。ただ、自社で採用活動をする際にかかる「求人費」「人件費」「諸経費」などのコストをカットすることができ、手間も省けます。
新卒採用などが顕著で、1年以上かけてインターンシップから採用活動を行ったにもかかわらず、1ヶ月もたたずに退職されてしまう事態もあります。リスクを抑えながら人材を効率よく確保したいという企業にとって、紹介予定派遣は使いやすいサービスです。
紹介予定派遣と通常派遣の違い
紹介予定派遣と通常派遣の違いについても説明していきます。
通常派遣では、派遣会社と派遣先の二重雇用を防止するため、面接は禁止されています。代わりに面談が実施され、業務スキルが足りているか確認し、問題がなければそのまま就業に進みます。
先ほどもお伝えしたように、紹介予定派遣は、直接雇用が前提となるため面接が行われる点も通常派遣との違いです。事前選考がある分、通常派遣よりも就業までのスピードが遅くなります。
業務を遂行してもらうことが目的の通常派遣と、将来的な会社への貢献度も含めて判断される紹介予定派遣では、企業から求められる能力にも差があります。紹介予定派遣では会社への理解や過去の経歴、知識やスキルを磨いておくことが重要です。
期間や手数料
紹介予定派遣は最長6ヶ月しか派遣社員として働きませんが、通常派遣の場合は3年ルールというものが設けられています。同じ企業・部署で3年以上勤務できないため就業場所はその都度変わっていきます。
「さまざまな仕事を経験したい」「同じ職場で働き続けたくない」という方は、通常派遣が向いています。しかし、「いつかは正社員になりたい」「どうしてもこの会社に入社したいけれど直接雇用はハードルが高い」という方にとっては紹介予定派遣の方が向いています。
派遣社員の努力や双方の同意があれば、派遣期間が短縮されることもあります。直接雇用への切り替え時、手数料が発生するのが紹介予定派遣ですが、通常派遣の場合は勤務中の派遣賃金のみとなります。契約満了時に手数料がかかることもありません。
紹介予定派遣の手数料相場
紹介予定派遣の手数料は、派遣会社や派遣先によってさまざまです。人材派遣料と人材紹介料に分けて解説していきます。
人材派遣料
人材派遣料は、派遣期間中に発生する料金です。交通費や福利厚生にかかる料金は派遣会社が負担しています。
派遣先企業は最長6ヶ月間、派遣料を支払います。支払われた派遣料から派遣会社が諸経費を引き、派遣社員に給与を支払う仕組みです。
派遣料の7割は、派遣社員に支払われる賃金です。賃金にプラスして社会保険料や派遣会社の諸経費が引かれ、最後に残った分が派遣会社の営業利益となります。
人材紹介料
紹介手数料は派遣社員が直接雇用に切り替わるタイミングで発生します。
金額は想定年収から算出されるのですが上限を50%として派遣会社が独自に定めることができます。50%を設定している派遣会社は少ないため、相場として20〜30%で設定されているケースが多いです。この割合は、事業許可申請のタイミングで事前に届出申請をしておくものになります。
具体的な例をピックアップしてみましょう。
- 月給20万円×12ヶ月+諸手当=想定年収300万円
- 300万円×20%=紹介料60万円
想定年収が300万円のスタッフが直接雇用に切り替わった場合、紹介手数料は60万円と計算できます。
紹介予定派遣に関するよくある疑問点
紹介予定派遣においてよくある疑問についても回答していきます。トラブルにつながらないように、細かな点も理解しておくようにしてください。
すぐに離職した時の手数料は?
紹介予定派遣で直接雇用に切り替えたあと、すぐに離職したらどうなるのでしょうか?元々直接雇用を前提に面接・選考を行い、両者の同意を持って直接雇用に切り替えているため、返金などの対応はありません。
直接雇用になってからの離職は派遣会社の影響の及ぶところではなく、社員の意思で退職している場合紹介手数料が戻ってくることはありません。そのため、直接雇用時に雇用形態を変更したり、給与が著しく下がったりする場合、企業は注意しなければなりません。
一般的に会社を退職する理由として一番多いのは「人間関係」です。部署を変えたり、定期的に面談を入れたりすることで、企業側は離職を防ぐように対策をしておくことが重要になります。
直接雇用の確率は?
直接雇用になれる確率はどのくらいかご存じでしょうか?
一般社団法人日本人材派遣協会の調査によると令和元年(2019年)16,323人が紹介予定派遣から直接雇用に結びついています。実際に派遣された数は31,233人ですので、5割以上の人数が直接雇用へつながっているといえます。
ただし、直接雇用=正社員というわけではありません。契約社員やアルバイト・パートスタッフも直接雇用ですので、正社員となった人数はもっと少なくなります。
正社員は雇用に期間のない唯一の働き方となるため、直接雇用かつ正社員雇用を目指せるよう、派遣会社がサポートしていくことが求められます。具体的には、派遣社員に対して次の指導・確認を心掛けると良いでしょう。
- 遅刻・早退・欠席を減らし、報連相を徹底させる
- 正社員を希望していることを日頃から言葉と姿勢で伝えさせる
- 正社員採用が前提になっていることを派遣先に事前に確認しておく
派遣先への確認は就業前に必ず確認してください。派遣社員は、当たり前のことを積み重ねていくことで派遣先からの信頼を獲得できます。
有給の発生時期は?
有給休暇はいつから発生するのでしょうか?
紹介予定派遣の場合、派遣期間と直接雇用期間の2つに分けることができますが、有給休暇は直接雇用に切り替わってから6ヶ月で付与されます。就業日数としてカウントできるのが直接雇用になった後なので、間違えないように気をつけましょう。
また、派遣期間の6ヶ月の就業中に8割以上勤務していることが条件になります。8割以上の勤務をクリアしているスタッフには、10日以上の有給が付与されることになるため、就業態度についても派遣先は把握しておく必要があります。
通常派遣と紹介予定派遣の向き不向きは?
紹介予定派遣が向いている企業は、派遣先の企業が長期で安定して働く人材を要求しているケースです。
たとえば、営業職や企画職のようなコミュニケーションスキルや創造性の求められる職種の場合、スポットで働く通常派遣は向いていません。技術が必要なIT・Web系や介護職のような資格を要する職種でも紹介予定派遣は好まれます。
将来的に正社員雇用が可能という前提がある紹介予定派遣であれば、優秀な人材の集客・マッチングもしやすくなります。
逆に、短期的なニーズや仕事の難易度が易しい案件に対しては通常派遣の方が向いていることが多いです。最長3年のペースで人が入れ替わっても大きく影響がなく、業績によって人員の調整を希望している企業の場合、通常派遣の方が利用しやすいでしょう。軽作業や事務職・短期のイベントスタッフなどは通常派遣に向いています。
まとめ
紹介予定派遣は、求職者が1人きりでは探せなかった会社との出会いにつながったり、頑張れば手が届く企業へ入社するチャンスになったりする働き方です。派遣会社が責任を持って求職者の面接・就業のフォローを行っていくことで直接雇用への可能性がひろがるでしょう。
ただし、企業間でトラブルが起きないよう、紹介時の手数料や仕組みについてきちんと理解しておくことが重要です。また、派遣業は人材を扱う事業なだけに、日々多くの応募者対応が発生しやすい業種です。
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