無期雇用派遣は「デメリットしかない」のか?メリットと他の雇用形態との違い

無期雇用派遣はデメリットが多いといった意見もあるようですが、そんなことはありません。どんな働き方にもメリットとデメリットはあります。どんなスタッフでも気持ち良く働けるよう、派遣会社はサポートしてあげることが重要です。

今回は、無期雇用派遣の特徴や、なぜ「デメリットしかない」などと言われているのか、3つの理由についても解説していきます。派遣会社に求められる対応を踏まえながら、企業とスタッフの架け橋になれるよう理解していきましょう。

無期雇用派遣とは?

まずは、無期雇用派遣の仕組みや、どのような案件が無期雇用派遣に多いのかについて解説していきます。無期雇用派遣の働き方を理解していきましょう。

無期雇用派遣の仕組み

派遣には「有期雇用」と「無期雇用」の2種類の働き方があります。期限の制限がある通常の派遣は有期雇用派遣と呼ばれ、通常3年以上同じ派遣先では勤務できないことになっています(※例外事由もあります)。

それに対して、無期雇用派遣とは、派遣元に期限なしで雇用されている状態で、派遣先の紹介を待っている間も給料が支払われるという特徴があります。

無期雇用派遣に向いている案件

無期雇用派遣に向いているのは、専門的な知識やスキルを要する案件に多いです。理系だとシステムエンジニアやプログラマー、文系だと営業職やマーケティング・企画職、医療・介護系などが向いています。

マイナビの実施した「2021年 派遣社員の意識・就労実態調査」によると、無期雇用派遣の業種割合は次のようになります。

無期雇用派遣の業種割合

・オフィスワーク・事務:23.0%
・販売:28.1%
・サービス:26.9%
・テレオペ・テレマーケティング:33.5%
機械・電気・IT技術・通信系:44.4%
・クリエイティブ系:37.8%
・医療・介護・福祉:35.2%
・製造:34.5%
・配送・輸送・物流:32.4%

もっとも高いのは、「機械・電気・IT技術・通信系」で44%を超える数値となっています。スキルを積み重ねていくことで派遣社員としての価値が高くなるため、期限を設けずに常に派遣会社が抱えておくために無期雇用にするケースが多いのです。

無期雇用派遣と他の雇用形態との比較

続いては、無期雇用派遣と、通常派遣・正社員の違いをそれぞれ解説しましょう。

通常雇用派遣との違い

通常の有期雇用の派遣社員との違いについては、無期雇用派遣の仕組みを紹介した部分でも触れましたが、派遣会社に直接雇用されているという点で異なります。

無期雇用の場合は、面接もあります。合否判定が出るため、応募しても受からないケースもあります。また、給与は月給制となり、業績によって賞与などが発生するケースもあります。

通常雇用派遣の場合、時給制が多く、賞与などもありません。働いた分だけしか給与は発生しないため、派遣先の契約が切れたらその間の収入は途切れてしまいます。

さらに、派遣先で長期休暇があればその分月収も変動します。たとえば、11月は24日勤務だったから月収24万円だったけれど、12月は年末年始休暇で19日しか働けなかったから月収19万円だったなど、勤務日数にバラつきがあるため収入が安定しにくいといわれています。

ちなみに、通常派遣は応募・面接をしても派遣会社に登録をしているだけで、就労するまでは待機期間となり雇用関係はありません。こうした身軽さを求めて派遣という雇用形態を選ぶ人は少なくありません。

無期雇用派遣の場合、正社員に近い働き方になり、同じ事業所で長期間働く必要があるため、自由に働きたいという気持ちで派遣を選ぶような人には向いていないかもしれません。

正社員との違い

正社員は、勤務先に直接雇用されています。社会的な信頼度も高いです。

無期雇用派遣の場合、雇用主は派遣会社ですが業務命令・指示は派遣先の企業から受けることになります。契約時に決めた以上の業務をすることはなく、クレーム処理などイレギュラーな対応も回数が決められていることが多いです。

また、派遣先で業績悪化が起きても、無期雇用派遣には影響しません。派遣会社の判断で給与が上がることが特徴です。

無期雇用派遣の場合、正社員よりも責任は軽くなることが多く、転勤の可能性がなかったり、休日出勤や残業もしなくて済んだりと、大きく派遣先の都合に振り回されることがありません。正社員と派遣には見えない壁が存在している企業も多いです。

飲み会に無理に参加しなくても済んだり、無理に人間関係を作り上げたりする必要がない分、気楽だという声もあります。

無期雇用派遣がデメリットしかないと言われる理由

遣社員

無期雇用派遣は、なぜ「デメリットしかない」と言われているのでしょうか?次の3つの理由について解説していきましょう。

デメリットしかないと言われる理由

・平均年収が低いから
・派遣先の紹介は断れないから
・正社員と待遇に差があるから

理由1:平均年収が低いから

1つ目の理由は、無期雇用派遣の方が、平均年収が低いというデータがあるからです。

正社員との給与差は大きいことが多く、派遣先で業績が好調になっても無期雇用派遣の賞与には影響が出ません。あくまでも派遣会社に雇用されていることを踏まえると、収入の伸びが緩やかなのが現状です。

無期雇用派遣の収入は、平均して年収300万円前後といわれています。専門性の高い案件であれば400万円〜500万円も可能ですが、本来正社員として勤務していればそれ以上稼げる金額であることが多いです。

特に無期雇用派遣の場合、システムエンジニアなど特別なスキルを要する職種も多くなります。収入やキャリアを上げるために無期雇用派遣を選ぶのはおすすめしないといわれているため、デメリットしかないと思われているのです。

理由2:派遣先の紹介は断れないから

2つ目の理由は、派遣先として紹介された企業を断ることは原則できないからです。

長時間の通勤や、希望とは異なる企業への派遣もあります。そうした紹介もときには飲み込まなければならないケースがあるのです。

無期雇用派遣の場合、登録型の有期雇用とは違い、就業していない間にも収入が発生するため、派遣会社もなるべく間をあけずに就労してもらえるよう積極的に案件を紹介してきます。

基本的に就労後は紹介先で決められた期間内就業し続けなければならず、頻繁に派遣先が変わったとしてもその都度なじめるよう努力したり、人間関係で揉めないように注意したりする必要があります。

理由3:正社員と待遇に差があるから

3つ目の理由は、直接雇用の正社員と比較したときに待遇に差が出てしまうからです。

直接雇用の場合、トラブルがなければ定年退職まで働くことができます。しかし、無期雇用派遣の場合は安定しているとはいえ、契約終了による解雇があります。

無期雇用派遣社員からしたら、常に「いつ今の場所にいられなくなるのか」という緊張感があります。正社員と比較しても昇格のスピードは遅く、責任のある仕事をなかなか任されにくくなります。派遣先の立場から考えても正社員でずっといてくれる社員と、契約解除の可能性もある無期雇用派遣では、キャリアアップの対象に派遣社員を選びにくいでしょう。

20代のうちはそこまで正社員と違いがないケースもありますが、30代、40代と年齢が上がるにつれて、順調にキャリアを積んできた社員とは大きく差が開く可能性が高いです。

無期雇用派遣のメリット

無期雇用派遣にもメリットはあります。デメリットばかり紹介してきましたが、メリットについても4つピックアップして解説しましょう。

メリット

・安定した収入を得られる
・研修や訓練を受けられる
・3年ルールの縛りがなくなる
・多様なスキルを身に付けやすくなる

メリット1:安定した収入を得られる

1つ目のメリットは、登録型の有期雇用派遣と比較すると、年間の収入がかなり安定することです。

有期雇用派遣は時給制ですが、無期雇用に切り替わったら月給制になり、賞与や交通費も支給されます。派遣先の賞与タイミングに合わせて社員の仕事ぶりを振り返るため、自分のスキルアップの確認や目標設定を立てる機会を設けやすくなります。

契約と契約の切れ目でも収入がある分、契約解除されても次の案件まで一定量の収入は入ってきます。派遣会社の立場からしても、給与を支給し続けているにもかかわらず働いてもらえなければ利益が発生しないため、次の就業までも素早くサポートするケースが多いです。

メリット2:研修や訓練を受けられる

2つ目のメリットは、無期雇用派遣のスタッフは派遣先もしくは派遣会社の研修制度を利用することができることです。

スキルを要する仕事が多いだけに、派遣会社も社員の能力を高めることで高い利益を獲得しやすくなるためです。就業中も派遣先の福利厚生に研修制度や訓練があれば参加が可能です。

無期雇用派遣社員を抱える派遣会社には、「キャリア形成支援制度」を導入する義務があります。これは、スキルや研修を用意することで長期的に人材育成をサポートしていくための環境を用意するものです。

未経験から挑戦するケースや、経験が浅いもののスキルを伸ばしてチャレンジしたいというスタッフにも支援制度を受けながら働いていけるという点が魅力です。登録型の派遣スタッフとは異なり、自分自身を磨きながら働き続けたいという方には働きやすいメリットとなります。

メリット3:3年ルールの縛りがなくなる

3つ目のメリットは、同じ派遣先での期間制限がなくなることです。

通常、有期雇用の派遣社員は3年ルールという縛りの中で働いています。内容としては、「同じ派遣先(事業主)で3年以上勤務してはならない」という個人単位の期間制限と、「同じ部署で3年以上勤務してはならない」という事業所単位の期間制限があります。

3年経過するタイミングで別部署に異動するか、新しい案件へ就業しなくてはなりません。せっかく覚えた業務や人間関係が生成できたタイミングで契約終了することも珍しくないため、なかなかキャリアアップがしにくくなってしまいます。

無期雇用派遣は3年ルールの対象外となるため、長期で働き続けられる可能性があります。

メリット4:多様なスキルを身に付けやすくなる

4つ目のメリットは、さまざまな派遣先で別々のスキルを身につけやすくなるという点です。

無期雇用派遣は、長く勤めていくと何社か派遣先が変わることが多いです。その都度新しい現場で新しいことを学べるため、自分の経験やスキルを多様に伸ばしていくことができます。

特に、技術者派遣と呼ばれるシステムエンジニアやプログラマーは異なる言語を幅広く身につけたり、同じ言語を極めたりしながら、上流工程と呼ばれる開発・設計部門を目指すことが多いです。

大手メーカーの開発部署などはある程度の技術がなければ採用されないため、無期雇用の技術者派遣でスキルを身につけてから正社員に挑戦するというキャリアパスを目指す人もいます。

派遣会社に求められる対応

派遣会社は無期雇用派遣のスタッフに対して、どのような対応が求められているでしょうか?事前に3つのポイントについて把握しておきましょう。

派遣会社に求められる対応

・禁止されている業務を確認しておく
・求職者の希望に近い案件を紹介する
・無期転換ルールを理解しておく

禁止されている業務を確認しておく

1つ目の対応として、派遣を禁止されている業務や職種を確認しておくことです。

正確には「適用除外業務」と呼ばれます。業務すべてではなく、業務の種類ごとに適用除外業務が設けられているためきちんと確認してください。

適用除外業務

・建設業務(施工管理業務およびCDAオペレーター、建設事務は含まない)
・港湾運送業務
・警備業務
・病院や医療関連施設における医療関連業務(医師、歯科医師、薬剤師、看護師・准看護師、保健師など)
・士業(弁護士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士など)

例外条件もありますが、基本的には上記の案件を受ける際は業務内容に気をつけるようにしましょう。

違反してしまうと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金という刑事罰に科される可能性があります。従わない場合、企業名を公開される恐れもあるため、派遣会社としても運営が立ち行かなくなってしまうでしょう。あいまいにせず、紹介した業種の案件と出くわしたら業務内容の洗い出しを行ってください。

求職者の希望に近い案件を紹介する

2つ目の対応として、求職者から派遣先の希望を確認する際に、かならず中身を確認してなるべく近い案件を探してあげましょう。無期雇用派遣は面接・選考もあるため、求職者にも前向きに取り組んでもらえなければ就業し続けてもらえません。

実際に派遣を辞退する形で退職率が高いことも問題です。退職されてしまえば派遣会社の利益はゼロになってしまいますので、気持ち良く就業してもらうためにも希望に近づけることは必要です。

どうしても希望に沿えない場合は、理由を丁寧に説明してあげるようにして、モチベーションを高めるようサポートしましょう。

無期転換ルールを理解しておく

3つ目の対応として、無期転換ルールを理解しておくことです。

無期転換ルールとは、「5年ルール」とも呼ばれます。有期雇用の派遣スタッフだけではなく契約社員・アルバイト・パートなどの非正規雇用社員は、5年同じ事業主のもとで勤務していれば、無期雇用への転換を申し込むことができるという内容です。

派遣会社としては、有期雇用派遣スタッフから申込があった場合、無期雇用への切り替えについて対応しなければなりません。派遣会社から通知・説明する義務があるわけではないため、かならず切り替えの必要があるわけではありません。

派遣会社にとって無期雇用派遣スタッフを1人抱えることは固定費がかかるため、リスクを伴うこともあります。自社の就業状況を踏まえて、就業期間が長いスタッフには切り替えの意思があるのか、あらかじめ会話をしておくと良いでしょう。

まとめ

求職者にとって無期雇用派遣はデメリットばかりではありません。派遣会社としても安定した人材の派遣につながるため、より多くの優秀な人材を抱えておくことが重要です。求職者にきちんとメリット・デメリットを伝えて双方が納得した就業を目指しましょう。

応募対応に苦戦している派遣会社はぜひ、当社ディップ株式会社が運営している「HRコボットfor応募対応」の導入を検討してみてください。

HRコボットfor応募対応

毎日多数の応募者対応をしていると、連絡が遅くなったり、管理が複雑になってしまったりすることがあります。そこで「HRコボットfor応募対応」を使えば、次のような機能を利用することができます。

  • 複数求人からの応募者を一元管理
  • 応募者への自動対応(24時間365日即時対応)
  • SMSの活用でコンタクト率大幅UP
  • チャットボットで事前アンケートを回収
  • 面談日時の自動設定
  • Web面談で非接触面談可能

面接率の向上や、対面からWeb面接へスムーズに切り替えられた成功事例もあります。また、導入企業は1700社を突破していますので安心してお使いいただけます。まずは気軽にお問い合わせだけでもしてみてください。