営業における「新規開拓」

新規開拓は、大企業から中小企業まで、すべての企業が行うべき営業手法です。しかし、新規開拓は簡単に成果の出る営業手法ではありません。

闇雲に行ってしまうと、自社のリソースだけが取られ、意味のない活動になってしまいます。今回は、新規開拓の概要から、企業が行うべき理由、成功させるコツなどについて解説します。

新規開拓とは

新規開拓とは、自社が行う営業活動において新規顧客を獲得することです。これまで見込み顧客としてターゲットとしていた顧客と契約を結ぶ、セミナーなどから興味を持ってもらった顧客と契約を結ぶなど、これまで自社と取引のなかった企業と契約を新たに結ぶことを指します。

新規開拓はまったくのゼロから営業活動を開始するため、既存顧客への営業と比較すると契約を結ぶまでのかかる時間や労力は大きくなることが特徴です。しかし、新規開拓は大企業から中小企業、またどのような業種の企業であっても絶対に必要な営業です。

そのため、どの企業においても、新規開拓に力を入れています。

新規開拓が必要な理由

企業において新規開拓が必要な理由は、主に次の2点です。それぞれの理由について解説していきます。

新規開拓が必要な理由

・自社の持続的な成長のため
・リスクヘッジのため

自社の持続的な成長のため

変化の激しいビジネスの世界においては、自社も常に変化し続けなければなりません。

変化を続けるためには、自社の事業の維持はもちろんのこと、持続的な成長を続けていく必要があります。なぜなら、持続的で安定した利益を上げ続けなければ、新たな事業の開拓や変化に対応することができないからです。

ビジネスの世界は競争の世界のため、既存顧客だけに頼ってしまっていると、ライバル企業が表れたり、自社の商品やサービスで質の上回るものが登場するなどしたりした場合に、競争力を保つことができず、あっという間にライバル企業にシェアを奪われてしまいます。そのため、市場の中で競争力を維持して、持続的な成長を続けていくことが必要です。

また、新規顧客を開拓することは、自社の売上の拡大にもつながります。新規開拓から継続した取引を行える顧客ができれば、安定した利益にも貢献ができます。

リスクヘッジのため

新規開拓を行うことは、自社のリスクヘッジにもつながります。

リスクヘッジとは、自社にとって不利益を被る不測の事態が起こった場合でも事業が継続できるように備えておくことです。自社の営業活動におけるリスクとしては、既存顧客との取引停止や不況による取引停止などが考えられます。

既存顧客がいることに安堵してしまい、新規顧客獲得の活動を続けていないと、既存顧客との取引が停止してしまった場合、自社が立ち行かない可能性も出てきてしまいます。特に、自社の売上の多くが特定の企業に依存してしまっている場合には、注意が必要です。

ビジネスは移り変わりが激しいため、懇意にしていた既存顧客であっても、経営陣が変わったなどの理由でライバル会社に乗り換えられてしまう可能性もあります。そのため、こういった既存顧客が離れてしまうリスクに備えるためにも、新規開拓によって顧客を増やし続けることが大切です。

また、昨今は新型コロナウイルス感染症拡大による不況や、歴史的な円高による物価上昇など事業を行ううえであらゆるリスクが存在しています。加えて、リーマンショックのような世界的不況も、突然起こりうるといっても過言ではありません。

こういった不況になってしまうと、事業縮小などの影響によって、取引停止を選択せざるを得ない取引先が出てきてしまう可能性もあります。

世界的な不況などは、自社の力のみではどうすることもできません。自社にできることは、こうした不況にも耐えられるようにリスクを最小限に抑える努力をすることです。そのため、新規開拓によって顧客数を増やし、万が一のリスクの場合でも事業を継続できるように備え続けることが求められます。

新規開拓を成功させるためのコツ

営業マン

新規開拓は闇雲に行っても成功することはありません。数打ちゃ当たる理論ではなく、次のようなコツを理解したうえで進めていくことが必要です。

新規開拓を成功させるコツ

・営業戦略を立てる
・営業リストを用意する
・既存顧客を分析する
・営業先の課題を検証する
・相手に合わせたアプローチをする
・KPIを設定してPDCAサイクルを回し続ける

それぞれのコツについて解説していきます。

営業戦略を立てる

新規開拓は、事前に立てた営業戦略に沿って行っていくことが基本です。営業戦略とは、自社が掲げる目標に対して、営業リソースや自社の課題を加味して、どんな業界のどのターゲットにどのようなアプローチをしていくのかを決めていくことです。

なお、営業戦略は短期ではなく、中長期的な視点から立てることが大切です。

たとえば、「1年間で新規顧客を40件獲得する」などが挙げられます。長期的な目標を立て、四半期ごとなどに目標に対しての進捗がどうか、効果的な施策となっているかなどが判断できます。

こういった営業戦略を立てるためには、自社の課題や強みを把握する「SWOT分析」や市場などの分析を行う「3C分析」を用いて、自社の現状を正確に把握することが必要です。

営業リストを用意する

営業リストを用意することも大切です。なぜなら、リストを用意することで、迅速な進捗確認や計画的な営業活動ができるようになるからです。

営業リストを用意する場合には、単純に企業名を羅列するのではなく、業種ごと、エリアごと、売上高ごと、受注角度ごとなど、誰もが見やすいように作成すると良いでしょう。

また、実際に営業活動を行った際に、担当営業が「いつ行って、どのような内容だったか、次のアプローチはどうすれば良いか」をリストに記載していくことで、内容のアップデートが行えます。

なお、営業リストの用意は非常に工数がかかる作業のため、効率的に作成をしたい場合には、営業リストの作成を行ってもらえる会社に依頼することもおすすめです。

既存顧客を分析する

自社とすでに取引している既存顧客を分析することも大切です。なぜなら現在の既存顧客は、もともと新規顧客として自社が獲得した顧客が継続的に取引を続けている顧客になるからです。そのため「なぜ新規顧客として契約ができたのか」「顧客は自社のどの部分を気に入って契約したのか」などを分析することで、新規開拓を行う際の自社の強みが分かってきます。

自社で分析することはもちろんのこと、実際に既存顧客に対してヒアリングを行うことも有効です。自社の視点からでは気づかない、客観的な視点が見えてきます。

営業先の課題を検証する

新規開拓営業では、自社の商品やサービスの押し売りになってしまってはなりません。商品やサービスの押し売りになってしまうと、ターゲットとしている顧客との間に壁ができてしまい、新規の獲得につながらないからです。

そのため、ターゲットとしている企業の課題について仮説を立て、検証をすることが大切です。

たとえば、ある企業では「残業が多いこと」が課題かもしれません。またある企業では、「紙の業務が多いこと」が課題かもしれません。

このように、企業は何かしらの課題を抱えています。同業界の別の会社では、「このような課題が多かったから同じかもしれない」などのように、ターゲットとしている企業の課題について仮説を立て、新規営業の際に検証をすると良いでしょう。また、検証結果を共有することで、次回の営業活動にも活かすことが可能です。

相手に合わせたアプローチをする

課題がターゲット企業それぞれで異なるように、アプローチ方法もターゲット企業によって異なります。なぜなら、現状の課題や顧客の関心がある事柄によって、適切なアプローチ方法は異なるからです。

課題を解決するための情報も、企業によって異なってくるでしょう。何が適しているのかを常に相手に合わせて考えることが大切です。

また、相手に合わせたアプローチを行うことで、相手先に好印象を残すことにつながります。新規開拓は一回の営業で完結することはほとんどないため、継続して営業ができる関係性を保つことが求められます。

KPIを設定してPDCAサイクルを回し続ける

KPI(Key Performance Indicator)とは、「重要業績評価指標」のことです。目標に対して具体的な数値を立て、進捗状況を定点観測することで、目標達成に向けた現状を適切に把握することが可能になります。

たとえば、目標とした数値に対して、進捗が芳しくない場合は、現在の行動に対して修正が必要だと判断できるなどです。KPIは多くの企業で取り入れられており、また客観的に効果を測定できるものなので、きちんと立てることが大切です。

加えて、KPIに対して、PDCAサイクルを回し続けることも大切です。PDCAサイクルとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字を取ったもので、計画した行動が適切だったかどうかを適宜確認する手法です。

PDCAサイクルを続けることで、成果が出る行動や改善が必要な行動が見えてきます。継続と改善を繰り返すことで、営業活動の効率化や成長につながっていきます。

新規開拓の営業手法

新規開拓の営業手法は、「アウトバウンド営業」に関する手法と「インバウンド営業」に関する手法に分類がされます。ここでは、それぞれに関連する手法について、具体的に解説していきます。

アウトバウンド営業

アウトバウンド営業に関する手法には、次のようなものが挙げられます。それぞれの営業手法について解説していきます。

アウトバウンド営業

・飛び込み営業
・テレアポ営業
・メール(DM)営業
・レター営業

飛び込み営業

飛び込み営業とは、アポイントを取っていないターゲット企業に対して、直接訪問を行う手法です。

飛び込み営業のメリットは、担当者がいれば、その場で顔を合わせて商品の説明やヒアリングができることです。良い印象を残すことができれば、次につなげやすい手法でもあります。

一方で、昨今のコロナ禍によって、飛び込み営業を快く思わない人もいるため、注意が必要です。

テレアポ営業

テレアポ営業とは、その名のとおり、ターゲット企業に対して電話をかけて訪問のアポイントを取ったり、資料の送付を行ったりするなど、訪問につなげるために行う営業手法です。

担当者につながれば、たとえその場で時間がなくても、訪問のアポイントを取り付けて次につなげることも可能です。また、自社で扱う商品やサービスによっては、その電話で契約が決まる場合もあるため、即効性にもメリットがあります。

一方で、テレアポの成功率はとても低く、成果を出すためには経験やノウハウが必要です。そのため、テレアポを外注で行っている企業も多くあります。

メール(DM)営業

メール営業とは、自社の商品やサービスの紹介を相手の担当者へメールを送り、反応によって訪問などにつなげていく営業手法です。メールアドレスがわかることが大前提ですが、わからない場合は、企業のホームページに設置されているお問い合わせフォームから、メールを送る場合もあります。

メール営業は短時間で多くの企業にアプローチができるので効率的に営業活動ができることが魅力です。一方で相手にきちんと読まれるために、件名や内容の工夫はブラッシュアップしていく必要があります。

レター営業

レター営業とは、ターゲット企業の担当者に対して直筆の手紙を送付して営業活動を行う手法です。古くから使われている営業手法であり、テレアポ営業や飛び込み営業と比較して必ず担当者まで届くのが最大のメリットです。

また、昨今では手書きの手紙などは珍しく、誠意が伝わりやすいと感じるため、取り入れている企業もあります。一方で、一件一件手書きすることは膨大な時間がかかるため、事前に送る相手を選定して、他の営業手法と併せて行っていくことがおすすめです。

インバウンド営業

インバウンド営業に関する手法には、次のようなものが挙げられます。それぞれの手法について解説していきます。

インバウンド営業

・SNS運営
・オウンドメディア運営
・YouTube運営
・広告運営
・オンラインセミナー
・セミナー・展示会の実施

SNS運営

SNS運営昨今では、SNSを活用して新規顧客を獲得する企業も増えてきています。TwitterやInstagramなどを活用し、自社商品やサービスの紹介はもちろん、ユーザーとコミュニケーションを直接取ることで、ファンを増やす施策を行っている企業もあります

SNSの魅力は、拡散力があることです。一度でもバズれば、世の中に認知される可能性が高まるほか、ターゲットとしていなかった層にまで幅が広がる可能性があります。反対に、炎上などのリスクがあるため、きちんとした運用体制を整えることも求められます。

オウンドメディア運営

オウンドメディア運営とは、自社で商品やサービスについての紹介などを行うWebサイトを運営することです。

Webサイトへのアクセスは、多くがGoogleなどの検索エンジン経由です。検索をかけてアクセスするユーザーは、何かしらの悩みや課題を抱えているため、課題を解決できる有益なコンテンツを発信できれば、信頼につながり、商品の購入などのアクションにつながっていきます。

オウンドメディア運営は、有益なコンテンツを多く掲載することや、検索上位を獲得するためのSEO対策などの知識が求められます。また、短期間で効果が出るものではないため、長期間の運用が必要になります。

YouTube運営

昨今ではYouTubeから課題や悩みを解決しようとするユーザーも増えてきています。たとえば、化粧品を販売する企業がメイクに使う道具を紹介し、メイクについての悩みを解決する動画などが挙げられます。

YouTubeで新規開拓を目指している企業も多くなってきています。有益なコンテンツを発信できれば、ファンの獲得などにつながっていきます。

広告運営

広告運営とは、オンライン広告からオフライン広告までさまざまな媒体の広告を利用して新規獲得を目指す手法です。

オンライン広告とはSNSの広告やYouTubeの広告などが挙げられます。一方で、オフライン広告とは、街中の看板や電車内のつり革広告などです。

他の手法よりもコストがかかってしまうことがあることが難点ですが、ユーザーに刺さる広告が打てれば、一気に認知度は広まっていきます。

オンラインセミナー

オンラインセミナーは、Webを利用して行うセミナーのことです。

オンラインセミナーのメリットはエリアが限定されないことやコストがかからないことです。従来の会場を借りてのセミナーは参加者に会場に来てもらう必要があったため、参加したくてもできないターゲットや移動にコストがかかってしまうので避けてしまうターゲットがいました。

しかし、オンラインセミナーであれば、参加者はどこからでも好きな場所から参加が可能です。そのため、エリアを限定せず、幅広い層にアプローチができます。また会場を抑えるコストなどもなくなるため、コストパフォーマンスに優れています。

昨今のコロナ禍によって、オンラインセミナーを実施する企業は増えてきており、オンラインセミナーから新規獲得につなげています。

セミナー・展示会の実施

オフラインで行うセミナーや展示会も一つの方法です。

メリットは、来場してくれた企業の担当者と直接話ができることです。その場で好印象や有益な情報を提供できれば、信頼が得られ、直接の訪問にも繋がっていくでしょう。

一方で、準備にリソースやコストがかかってしまうため、想定した見込みよりも来場してくれない可能性があります。そのため、綿密な準備が必要になってきます。

新規開拓を行う際の注意点

新規獲得を行う際の注意点としては、次の3点が挙げられます。それぞれの注意点について解説していきます。

注意点

・相手先での印象に気をつける
・効率的な営業を行う
・数字や実績などの強みを理解する

相手先での印象に気をつける

新規開拓では、相手先での言動に今一度注意することが必要です。特に、第一印象の影響でその後の関係性が決まるといっても過言ではありません。

心理学には「メラビアンの法則」と呼ばれる法則があり、第一印象は出会って数秒で決まるとされています。そのため、ターゲット先では話し方だけに囚われず、見た目などの外見にも注意する必要があります。

第一印象で好印象を与えられれば、その後の営業活動にもスムーズにつながっていきます。

効率的な営業を行う

新規開拓では、多くのターゲット企業にアプローチをかけることでしょう。そのため、早く成果を出すためには、効率的に営業活動を行うことが求められます。

そのためには、ターゲット企業に闇雲に営業をかけるのではなく、確度の高い見込み顧客に重点的にアプローチをする、ツールを活用して生産性を上げるなど工夫が必要です。自社の営業リソースを見極め、効率的に行うようにしましょう。

数字や実績などの強みを理解する

営業においては、競合他社の存在は見逃せません。競合他社よりも自社を選んでもらうためには、自社の強みとなるような数字や実績を活用して優位性を示す必要があります。

ターゲット企業の課題に合わせて、このサービスを利用すると〇〇%改善した実績があるなど自社の強みを理解し、具体的にアピールできるようにすることが大切です。

まとめ

新規開拓は簡単に成功するものではありません。長期の計画の下に効率的に行い、実績を積み重ねていくものです。企業が持続的な成長を行っていくためには欠かせない営業活動になるため、PDCAサイクルを回しながら続けてみてください。

ディップ株式会社では、新規開拓にも利用ができる「セールスパック」の提供を行っています。

セールスパック

リストの作成からテレアポの代行まで行っており、自社リソースで足りない部分を補うことが可能です。ぜひ、新規開拓を行う際には検討してみてください。