大手からベンチャーまでIT事業をしている企業が増加している日本において、エンジニアの人材不足は非常に大きな課題となっています。企業からはどういった人材ニーズがあり、エンジニアは何を求めているのかを把握しながら自社の採用計画を進めていくことが重要です。
今回は、採用手法や最新のサービスを紹介しながら、採用成功のポイントを解説します。採用活動に苦戦している企業や、見直しを図っている担当者のみなさまは、最後まで読んでぜひ参考にしてみてください。
エンジニアを取り巻く雇用環境
エンジニアを取り巻いている雇用環境は早いスピードで変化し続けています。まずは、2023年の最新の情報をもとに、求人数や応募の傾向について説明します。
求人数の推移
株式会社ギークリーの発表によるとインターネット業界の採用を求める求人数は、2022年9月の求人数に107%と引き続き増加傾向で、特にSaaS企業を中心に求人増加が目立っています。
インターネット業界は他業界より事業成長速度が速いため、求人倍率の高まりも強く、直近の有効求人倍率は2022年9月時点で9.7倍まで上昇しています。
このことからもわかるように、エンジニアの採用ニーズはコロナ禍を機に加速しており、今後もますます企業にとって厳しい状況が続くと見られています。
応募の傾向
応募数も増加傾向にあり、2020年のコロナを機に一時下がったものの、2022年12月までには20~30代の応募が1.2倍まで増加しています。コロナがまん延する前の状態まで戻り、今後ますます活発になっていくと見られます。
採用難易度
これに伴い、採用難易度はどんどん高くなっています。求人数が増加、求職者の応募数も増加していますが競争は激化しており、応募が集まる求人とそうではない求人の二極化が進みます。
インターネット業界のエンジニアはモダンな印象で人気があり、従来のSIer(エスアイヤー)から流出が起きています。SaaS系など時代のニーズや魅力的な業務内容を打ち出している企業がうまく採用活動を進められており、その他のエンジニア採用は苦戦している企業が増えているのです。
エンジニアの求めている働き方
エンジニアが就職先を探す際に、求職者はどういった観点で検索しているのでしょうか?エンジニアが求めていることがわかれば、応募を獲得するためのヒントになるものです。
ここでは、仕事内容・給与・労働条件の3つの観点から解説します。
仕事内容
求める仕事内容は、「業務量」と「業務の幅」、「スキルアップの有無が」ポイントです。
人手不足が原因で業務量過多の状態が続くと、エンジニアのモチベーションも下がってしまいます。適切な時間をかけて一つのプロジェクトに取り掛かれることが重要です。
また、業務の幅と働きながらスキルアップができるかどうかもよく見ています。特に、何年たっても同じような業務を任せていると成長を感じることができなくなり、離職の原因となってしまいます。個々の能力に対して適切な評価を行い、適度に新しいプロジェクトに参加できる環境を整えたり、セミナーや研修への参加を促したりする必要があります。
経験が浅いエンジニアの場合、あえて派遣形態を選び短期間でさまざまな企業の経験を積む働き方を選ぶケースもあります。採用してから仕事を振り分けるメンバーシップ雇用と呼ばれる働き方よりも、仕事をベースに人材を雇用するジョブ型雇用も今後ベーシックになると見られています。
給与相場
エンジニアの給与相場は、542万円です。相場の給与よりも低い給与しか提示できない場合は、他のアピールポイントを増やす必要があります。
たとえば、業務内容に魅力的な部分があることや、上流工程から携われることなどがアピールポイントです。
上流工程とは開発設計や要件定義といった初期の工程を指しています。技術者派遣のような働き方の場合、下流工程を任されることが多いため、上流工程に携わることを目指して転職したりします。
提示している給与が相場よりも高い場合は、会社が求める人材を狙いにいくチャンスです。媒体選定や採用手法を決める上で、参考にしてみると良いでしょう。
労働環境
エンジニアは、労働環境も重視した仕事探しを行います。たとえば、リモートワークが導入されている企業とされていない企業では、同じ募集条件の場合、リモートワークで勤務可能な案件の方が人気です。
フレックスタイムを導入して、勤務時間に縛りを設けないことも効果的です。自分の自由に働きたいと希望している人も多いため、そうした思考に寄り添えると強みといえるでしょう。
また、エンジニアは一般的に残業が多くなるケースも多いため、業務分掌などで業務量が調整されていることも大きなポイントです。急なトラブルや納期の遅れが発生しやすいエンジニアですが、サポート体制や分業が進んでいる企業であれば、求人原稿で打ち出すようにしましょう。
エンジニアの採用手法
続いては、代表的なエンジニアの主な採用手法を4つ紹介します。それぞれ特徴やメリットがあるため、自社の状況に合わせて選択すると良いでしょう。
・求人サイト
・人材紹介
・技術者派遣
・転職イベント
求人サイト
1つ目の採用手法は、求人サイトに求人広告を掲載する方法です。
求人サイトは、IT・WEB系専門のものもあれば、広く業種を問わないものもあります。経験が浅くても採用したいシーンや、ブランクのある人をターゲットに入れている場合、一般的な求人サイトを使うと露出を高めることができます。
しかし、未経験の人材など大きくターゲットからずれた応募・閲覧も獲得しやすくなるため、確実に経験者だけが欲しい場合は専門サイトの方が使いやすいでしょう。
求人サイトには、掲載する際に料金が発生するものや、広告を閲覧されたタイミングで料金が発生するものなど、いくつかのパターンで価格が設定されています。
人材紹介
2つ目の採用手法は、人材紹介です。人材紹介とは、求職者と企業の間に人材紹介会社が入ってスムーズに採用ができるようサポートしてくれるサービスです。
人材紹介会社は求職者の応募送客や面接指導、条件交渉などを代わりに行います。こうしたサポートにより、自己アピールが苦手なものの能力値が高い人材などもうまくピックアップしやすくなります。
企業に対しても欲しい人材のヒアリングをもとに採用難易度を提示したり、求人原稿の見直し、スカウト送付の提案をしてくれたりするため、業界に詳しくない人事担当が採用活動をするときや、既存のエンジニアの協力が仰ぎにくいシーンでも安心です。
企業と求職者が直接やり取りするよりも採用確率が上がり、企業側にとっても初動の手間が省けるため効率良く採用活動を進めやすくなります。登録や求人掲載は無料でできるケースが多く、採用が決定したタイミングで理論年収の25〜35%の手数料が企業側に発生します。
技術者派遣
3つ目の採用手法は、技術者派遣で雇用する方法です。
技術者派遣とは、派遣会社からエンジニアを派遣してもらい、自社の業務についてもらう勤務方法です。派遣社員なので自社のスタッフではないものの、良い人材であれば直接雇用契約を打診することも可能です。
技術者派遣は、スキル不足の人材がスキルアップのために従事しているケースも多く、派遣会社が間に入っているため、通常の採用よりも安心感もあります。
派遣形態は2つあり、「常用型派遣」と呼ばれる正社員のような働き方と、「登録型派遣」という一般派遣と同じような働き方のいずれかです。すぐに人材不足を解消したいケースや、自社で人材を抱えるのは抵抗があるIT企業などがよく利用している方法です。
転職イベント
4つ目の採用手法は、転職イベントなどの企画を開催して集客する方法です。
対面型のイベントだけではなく、オンライン上で説明会を開催するケースも増えています。イベント開催の良いところは、複数社で企画するため集客力が強くなる点です。
大手企業や人気の同業他社を巻き込むことができれば、一気に注目度を上げることができます。また、直接求職者と会話しながらアピールすることができるため、面接率が悪い企業にとってもおすすめの手法です。
エンジニアを採用するためのポイント
エンジニアを採用するためには、次の5つのポイントを押さえておくと良いでしょう。
・雇用条件の見直し
・採用計画の立案
・選考のリードタイムの短縮
・既存スタッフとの協力
・ターゲットの見直し
雇用条件の見直し
1つ目は、雇用条件の適正化です。採用相場やエンジニアの希望している働き方を踏まえて、自社の雇用条件に見直せるポイントがないか探してみましょう。
給与をいきなり変えることはできなくても、評価制度を公表したり、研修やスキルアップ制度を用意したりすることで、同業他社との差別化を図ることができます。
雇用条件が著しく相場より低い場合、採用成功まで時間やコストがかかる可能性があります。その点を踏まえた上で長期戦に臨むのか、条件を見直してみるか考えてみると良いでしょう。
採用計画の立案
2つ目のポイントは、採用計画を立てることです。採用計画を立てずに採用活動を始めてしまうと、行き当たりばったりの状態となり、効果検証もうまくできません。
まずは目的や目標を決めて、何をどこまでするか考えてみてください。KPIや予算設定は過去の数値を参考にすると大きく乖離せずに済みます。
過去のデータがなければ、求人広告もしくは人材紹介の営業担当に相談してみると良いでしょう。相場を踏まえた採用計画の立案が重要です。
・採用目標人数
・採用時期
・採用手法
・予算
・効果検証のタイミング
上記の項目についてあらかじめ設定しておくと、採用活動に関わるスタッフの目線を合わせることができます。
選考のリードタイムの短縮
3つ目のポイントは、選考にかかるリードタイムを短くすることです。
リードタイムとは、求職者からのアクションに対してレスポンスをするまでの時間を指します。たとえば、書類選考に1週間かけていたものを3日以内に短縮したり、面接結果の告知を前倒しに早めたりすることです。
なぜかというと、リードタイムが長くなればなるほど、求職者の温度感が下がりやすくなるためです。同時並行で複数社応募をしている場合、併用先に先手を打たれてしまう可能性もあります。
リードタイムを早めることで確実に囲い込みやすくなり、求職者の熱意を保ちやすくさせることができます。
既存スタッフとの協力
4つ目のポイントは、既存スタッフとの協力体制を組んでいることです。
人事担当はエンジニアの経験がないケースもあります。現場の状況や仕事内容などについて曖昧なまま採用活動を進めようとすると、せっかくエンジニア経験者が応募してきたとしても求職者と話がかみ合わない場合があります。
より専門的な知識を持って求職者を口説いていくためにも、既存エンジニアに協力してもらうと良いでしょう。
ターゲットの見直し
5つ目のポイントは、ターゲットの見直しです。
エンジニアといっても業務の幅は広く、必要な言語やプロジェクト内容によって求める技術レベルが異なります。エンジニアは転職ありきで就職先を探しているケースも多いため、一つの企業で一生居続けようと思っていない場合もあります。
その点を逆手に取り、魅力的な仕事内容やプロジェクトをアピールすることができれば、ジョブ型雇用のように業務に魅力を感じて集められることもあります。業務で使用する言語・上流のフェーズから携われるかどうか・プロジェクトの内容などをもとに、採用ターゲットを見直してみましょう。
エンジニア採用のおすすめサービス8選
エンジニア採用をする上で、おすすめのサービスを8社紹介します。それぞれ専門性も高く特徴も異なるため、自社のニーズに合わせて組み合わせてみると良いでしょう。
Green
「Green」は株式会社アトラエが運営しているIT/Web系に強い成果報酬型の転職サイトです。
ユーザーサイトのTOPページに書いてある「転職はこれまで結婚だったけど今は恋人同士のような関係性なのではないか?」というコピーがまさに近年のエンジニアの思考を押さえていると感じさせます。違うと感じたら転職する、良い関係性が築けている間は所属する、そうした関係性をスムーズにつなげているのが「Green」です。
IT業界を中心に15,000件以上の求人数が掲載されており、カジュアル面談やスカウト機能を用いて求職者と企業のタッチポイントを増やしています。ユーザーは25〜35歳が6割を占めており、若年層の即戦力採用にぴったりです。
また、価格については成果報酬型のサービスで、一人当たり60〜120万円と職種ごとに固定で料金が決まっています。
料金
- 1名採用:60~120万円
公式サイト
TECH OFFER
株式会社テックオーシャンが運営しているのは、理系学生に向けた「TECH OFFER」という転職サイトです。「就活の方程式を変える」というキャッチコピーが印象的なサイトで、理系学生が大学生活中に培った知識や学問と企業をマッチングさせるサービスを展開しています。
40,000件にものぼる研究室のデータベースと100万件の技術キーワードを組み合わせて確動性の高いマッチングを目指しています。理系学生は年々人気が高くなり、母集団形成に苦しむ企業が増えています。「TECH OFFER」を活用することでダイレクトリクルーティングが可能になり、オファーを自動化することもできます。
また、登録している学生の約47%がプログラミングスキルを保有しており、エンジニア採用がしやすい環境といえます。企業の手間を省きながら効率よくエンジニアの卵を採用したい企業におすすめのサービスです。
料金
- 利用料 150万円~480万円
公式サイト
Indeed
Indeedは、エンジニアに関わらずほぼすべての業種・雇用形態が掲載されている求人の検索エンジンです。
ハローワークなどの職業紹介案件から、通常の有料公募媒体、企業の採用ホームページなども転載されているビックサイトです。エンジニア募集に特化していないものの、日本で最もユーザー数が多い媒体となるため、掲載した際の露出度を高めることができます。
自社の採用ホームページを活用した採用活動や、他の求人サイトを利用する際でもIndeedへの掲載・転載を意識した作りにするのがおすすめです。
もちろん単体で利用する分にも効果は見込めます。クリック型課金形態を採っているため、ユーザーから閲覧されたら料金が発生するスタイルで、掲載コストがかからないぶん効率良く採用活動を進めることができます。
料金
- 1クリック:15~1,000円
公式サイト
Geekly(ギークリー)
IT・Web・ゲーム職種の転職エージェントサービス「Geekly(ギークリー)」を運営しているのが株式会社Geekly(ギークリー)です。
業界の専門性に長けていることが魅力で、業界歴11年だからこそのノウハウや知見を借りながら採用活動を進めていくことができます。高い採用率を誇っており、紹介実績は10,000社を超えています。
また、公開求人は約13,000件に対して約17,000件を超える非公開求人も用意されています。大手企業など求人情報を公開したくない企業からの相談も多いことが伺えます。
登録者の93%が即戦力として活躍できる人材であり、高い評価を得ています。成果報酬型のため相談料などはかからず、紹介手数料は職種によって異なるため問い合わせてみましょう。
料金
- 掲載費用:0円
- 紹介手数料 職種による
公式サイト
Find Job!
IT・Web業界特化型の転職サイトとして株式会社MIXI RECRUITMENTが運営しているのが「Find Job!」です。
顧客が求人票を作り、チャット機能を活用しながら応募者とやり取りすることができるサービスなので、スピード感がありスムーズな採用成功につなげやすくなります。
作成した求人票は運営側が事前確認してくれるので安心して掲載でき、依頼から24時間で掲載開始できる手軽さも魅力的です。
登録ユーザーの77%が20〜30代であり、職種はデザイナー・エンジニア・ディレクターが75%を占めています。
転職会議をはじめとした複数媒体へ自動転載されるため、幅広く掲載カバーすることが可能です。急な欠員などにも対応しやすく、スピード感を求める企業におすすめの媒体です。
料金
- ライトプラン(30日):5万5,000円~
公式サイト
サポーターズ
株式会社サポーターズが運営している「サポーターズ」は、新卒学生向けのエンジニア採用サービスです。学生の育成から就職支援まで企業と人材を結びつけるマッチングサービスを展開しています。
特にエンジニア人材と企業を結ぶための取り組みとして、「オンライン1on1イベント」「WEBスカウト」「人材紹介」の3つをメインに力を入れています。
大手企業だけではなく従業員50名以下の企業規模に対しても成果をあげており、丁寧で細かいサービスの提供がうかがえます。他社と比較してもエンジニア学生の登録数が2倍以上になるため、学生から採用して自社のやり方に染めていきたいと考えている企業に向いています。
料金
- 初期費用、運用費用は要見積もり
公式サイト
レバテック
「レバテック」は、レバテック株式会社が運営しているITエンジニアとデザイナーに特化した採用支援サービスです。
新卒・中途・フリーランスまで幅広い契約形態に対応しており、職種別の専門チームが担当してくれます。求める人材の要件定義についてもコンサルタントからアドバイスをもらいながら整理することができ、採用成功まで徹底的にサポートしてくれます。
エンジニアやデザイナーに特化したサービスのため、専門的な知識・ノウハウも多く、取引企業数5,000社以上を超えています。成果報酬型のため、入社が決まるまで無料でサポートしてもらえるのも安心のサービスです。
料金
- 成果報酬型、初期費用不要
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まとめ
エンジニア採用は、一般企業・派遣企業どちらにとっても難易度が高い職種です。 今後ますますニーズが高くなり、価値が上がる職種となるため、今のうちの対策を立てながら採用計画を作りましょう。今回の記事を参考に現状を見直すきっかけにしてみてください。