採用コストの削減方法

人を求めている企業へ適切な人材を派遣するのが派遣業ですが、「年間の採用コストが膨らみ過ぎて利益が出ていない」ということがよくあります。いざ採用コストを削ろうと考えてもどのくらいが相場かわからなければ、削減することができないものです。

今回は、採用コストを削減する7つの方法と注意点について解説します。採用コストの相場観をつかみながら、無駄なコストは削りつつ効率の良い採用活動を進めていきましょう。

採用コストとは

採用コストとは、採用するためにかかった全体の総額費用のことです。求人広告などの出稿費用や人事部の給料、採用管理システムの利用費用などが該当します。

採用活動がスムーズに進んだり、採用予定人数が少なかったりする場合は、採用コストを抑えることができますが、人材不足が加速し採用活動に苦戦している場合は、採用コストが膨らんでしまいます。

企業にとって、適切な採用コストで良い人材を獲得することがベストであるため、採用コストをどのように抑えるかは重要な課題です。

採用単価

一人あたりの採用コストを採用単価と呼びます。たとえば、求人広告を10万円で掲載し、5名採用することができたら、求人広告の採用コストは2万円です。

採用単価は求めている人材のスペックや雇用形態によって大きく異なります。一般的に、アルバイトの方が正社員よりも安価になり、新卒社員よりも中途社員の方が安価です。

内部コスト

内部コストとは、社内で行った採用活動にかかるコストです。

主な内部コスト

・採用担当の人件費
・面接などの選考にかかる費用
・採用活動に関わる交通費
・説明会などのイベント開催費用

社内で関わる人数が増えれば増えるほど、内部コストは膨らんでいきます。表面化しにくい部分であるため、意識してチェックしておくことが重要です。

外部コスト

外部コストとは、社外で行った採用活動にかかるコストです。

主な外部コスト

・求人広告費用
・人材紹介手数料
・採用パンフレットの制作費用
・採用動画の作成費用

採用コストとしてカットしやすいのが外部コストです。広告費用を見直したり、採用手法そのものを見直したりするケースが多いでしょう。

採用コストの算出方法

採用コストは、「内部コスト+外部コスト」で総額を出すことができます。細かく費用を控えておかないと計算が煩雑になるため、あらかじめ帳簿などに残しておくと良いでしょう。

採用コストは、一回のプロジェクトごと・1ヶ月や1年などの期間ごと・アルバイトや正社員などの雇用形態ごとに算出しておく必要があります。それぞれの分類で自社の採用コストを確認してみてください。

採用コストの相場

採用コストには、相場があります。ただし、採用予定人数や人材要件の高さ、利用している採用手法により異なるため、あくまでも参考としてチェックしてください。

新卒採用の相場

就職みらい研究所の「就職白書」によると、新卒採用の相場は93.6万円です。

新卒採用は、選考フローが通常のアルバイトや中途社員とは異なるため、コストがかさみやすくなります。たとえば、「リクナビ」「マイナビ」のような新卒専用の就職サイトに掲載する場合は年間掲載となるため、それだけで100~200万円ほどの予算が必要です。

さらに、頻繁に説明会を開催しており、選考も1次で決まることは少なく、エントリーシートの選考からグループワーク、社内見学や座談会の開催など多くのプログラムを用意している企業が多いです。

新卒採用は、将来への投資としばしばいわれます。入社時に業務に関する能力はなくても、きちんと教育することでリーダー職や幹部候補に育つ可能性があるためです。

新卒採用を軌道に載せるためには2〜3年を要するため、企業によっては中途採用よりも採用コストをかけているケースも多く見られます。

中途採用の相場

就職みらい研究所の「就職白書」によると、中途採用の相場は103.3万円です。

中途採用は、新卒と違い能力値をシビアに判断して選考を進めるケースが多いでしょう。たとえば、メーカーのように専門職を多く集めたい業種では、高い年収を提示されてもコストをかけて採用することは珍しくありません。

企業によりますが、面接回数も新卒ほど数を重ねず内定を出しているところが多いでしょう。

終身雇用が一般的だった時代は終わり、今や転職をすることは当たり前の世の中になりつつあります。そのため、これまで以上に求人広告費用や人材紹介料をかけて、素早く中途採用を行う企業が増えているのです。

求人広告の相場

マイナビ転職の「中途採用状況調査2022年版(2021年実績)」によると、求人広告の相場予算は企業規模によって次のとおりです。

企業規模別求人広告費用相場

・従業員1,001名以上:平均267.7万円
・従業員301~1000名:平均106万円
・従業員51~300名:平均64万円
・従業員50名以下:平均46.6万円

派遣会社のように多くの人材が必要な企業であれば、相場以上に採用コストがかかります。逆に、企業規模が大きくても、採用ブランディングができていて求人広告をまったく利用していない会社もあります。

たとえば、任天堂株式会社は世界的にも有名なゲームメーカーですが、求人広告を打ち出さなくても自然と応募が集まります。それは、任天堂株式会社へ入社することを、子どものときから憧れている人材や、この会社でなければだめだという強い動機を持った人材がたくさんいるからです。

求人広告に掲載するコストは増えているものの、一方で企業としての魅力度を上げて、オウンドメディアのみで集客ができる状態を目指す企業が近年は増えてきています。

人材紹介の相場

マイナビ転職の「中途採用状況調査2022年版(2021年実績)」によると、人材紹介の相場予算は企業規模によって次のとおりです。

企業規模別人材紹介費用相場

・従業員1,001名以上:平均600.8万円
・従業員301~1000名:平均316.3万円
・従業員51~300名:平均254.2万円
・従業員50名以下:平均107.6 万円

人材紹介を利用する企業には、いくつかのパターンがあります。たとえば、自社の社員に募集していることを知られなくないケースです。

求人広告を掲載すると、既存社員の目に留まります。しかし、新規プロジェクトの募集や会社にとって公にしたくない中核の募集などの場合は、人材紹介の方が使いやすくなります。

人材紹介は成果報酬型が多いため、採用数が多ければ多いほど採用コストがかかります。一人分の手数料は理論年収の25~35%と高額であるため、採用難易度の高い募集や採用予定数が少ない場合に絞って導入すると良いでしょう。

業界別の相場

マイナビ転職の「中途採用状況調査2022年版(2021年実績)」によると、業界別の相場予算は次のとおりです。

業種採用コスト予算
IT・通信・インターネット636.1万円
メーカー752.2万円
商社  341.1万円
サービス・レジャー597.4万円
医療・福祉・介護 438.6万円
流通・⼩売・フードサービス320.8万円
マスコミ・広告・デザイン52.6万円
金融・保険・コンサルティング652.2万円
不動産・建設・設備・住宅関連441.3万円
運輸・交通・物流・倉庫446.8万円
環境・エネルギー506.1万円

もっとも採用コストを多くかけているのが「メーカー」で、一番安価な「マスコミ・広告・デザイン」と比較しても15倍近くの差があります。業界の人気度や、採用ターゲットのハードルの高さなど、さまざまな要素が組み合わさり、このような結果になっています。

採用コストを削減する方法

コストカット

採用コストを削減する方法としては、主に次の10通りの方法があります。新しく追加したり、必要のない手法を削ったりしながら、無駄の少ない採用活動を目指しましょう。

現在の状況を確認する

まずは、現状を正しく把握する必要があります。

採用コストにいくらかけているのかわかっていない企業も多く、正しい数値を把握できていないケースもあります。社内の人件費や諸経費などの内部コストと、求人広告などにかかる外部コストを正確に割り出しましょう。

その結果、「外部コストに費用が偏りすぎている」「内部コストが思った以上に圧迫している」などの課題が浮き彫りになってくるでしょう。

人材派遣業の場合、営業も採用活動に関わっていることが多いものです。そのため、かかわりのあるすべてのスタッフの採用にかけている人件費や、求職者と会話するときの電話代など見逃さないようにしましょう。

正しく状況を把握できなければ、不要なコストカットをすることになりかねないため、注意が必要です。

採用ターゲットを見直す

2つ目は、採用ターゲットの見直しです。

派遣会社の場合、難しいのは派遣先の要望に応える形で人材募集を行うことです。自社でターゲットをコントロールしにくくなるかもしれませんが、派遣先への交渉をしながら少しハードルを下げてみても良いでしょう。

面談をしてみたら相性が良かったということもあるため、間口を広げて募集すれば採用コストを削減しやすくなります。派遣先の業務を細かくヒアリングして、「あれば良いスキル」と「なくてはならないスキル」を明確に判断することが採用ターゲットの見直しにつながります。

過去のデータを確認する

3つ目は、現状の確認だけではなく過去のデータも洗い出してみることです。

自社でこれまで行ってきた採用活動に見直すポイントや参考にすべきポイントが見つかることがあります。過去を振り返った上で、良い結果をもたらしたのに、現在継続していないことがあれば再開する必要があるかもしれません。

逆に、継続しているものの効果につながっておらず、費用だけが膨らんでいるプロセスがあれば削除する候補に加えても良いでしょう。

採用手法を厳選する

4つ目は、採用手法を絞ることです。

「求人広告」「エージェント」「オウンドメディアリクルーティング」「SNS採用」など、採用手法を増やせば増やすほど採用コストは増えていきます。

本当に必要な採用手法に絞って、費用対効果の良くないものは見直してみましょう。

その際に注意していただきたいことは、即効性のあるものと効果が出るまでに時間がかかる採用手法があることを認識しておくことです。オウンドメディアリクルーティングやSNS採用などは育成期間が重要であり、効果につながるまで時間がかかりやすいため、判断するタイミングだけ気をつけましょう。

無料で活用できる採用手法を探す

5つ目は、お金をかけずに使える採用手法を探すことです。

近年、インターネット上では無料で掲載ができる求人転載サイトや、簡易的な採用管理システムが増加しています。まずは無料で活用できるものを探し、そのうえで不便に感じている部分を有料のサービスに切り替えれば、余計な採用コストを削減することができます。

ただし、無料の採用手法の多くは自社の人手を多く割くケースが多く、手間がかかってしまいます。自分たちで原稿を作成したり、効果をみて運用したりする必要があるため、人手不足の場合には向いていません。

オウンドメディアを活用する

6つ目は、オウンドメディアを活用することです。

オウンドメディアとは、企業のホームページやランディングページ、パンフレットなどを指します。オウンドメディアリクルーティングは、採用活動において欠かせない手法となっており、自社の採用力を上げたいと考える企業に合った方法です。

採用コストの削減にも効果的で、オウンドメディアを改善することで効率良く母集団形成を行うことができます。オウンドメディアは「保有」しているだけでは意味がなく、「運用」していくことが重要です。

案件情報が古かったり、企業からのお知らせが更新されてなかったりと、制作から何年も放置しているようであれば、一度見直してみると良いでしょう。

SNSを活用する

7つ目は、SNSを活用する方法です。

SNSアカウントの作成は多くの場合、無料で行えます。そのため、費用を抑えて採用活動を開始することができます。

SNSは企業のリアルな情報や社員の声を掲載できる求職者にとって身近なツールです。実際、「入職まで丁寧にフォローしてくれるのか」「社員の雰囲気が知りたい」と応募までにSNSをチェックする求職者も多くいます。

募集案件をSNSに掲載するだけでも露出を増やすことができるため、採用コストを削減したい派遣会社におすすめの手法です。

リファラル採用に力を入れる

8つ目は、リファラル採用を強化することです。

リファラルとは、「紹介」という意味です。既存の派遣スタッフから新しい応募者を紹介してもらうことができれば、採用コストを大幅にカットすることができます。また、リファラル採用で入社した人材は、ある程度の信頼を持った状態で接触できるため、定着率が良い傾向にあります。

「知り合いを紹介してくれたらクオカードプレゼント」などキャンペーンを作るのも効果的です。常に「仕事を探している知り合いがいたら紹介して欲しい」と声をかけておくようにしましょう。

インターンシップを取り入れる

9つ目は、インターンシップを取り入れることです。

インターンシップは、一般的に大学生が就職活動の一環として、企業で入社体験をすることです。アルバイトのように給料が発生するものもあれば、無償で体験するタイプもあります。

インターンシップは、学生にとっては職場体験ができる貴重な経験になり、企業にとっても将来の人材確保につながるきっかけとなります。新卒採用は特にコストがかかりやすい業種であるため、インターンを取り入れることで母集団形成もしやすくなります。

学生と企業の双方にメリットがあるシステムなので、積極的に取り入れると採用コストを上手にカットできるでしょう。

ツールを活用する

10個目は、ツールを導入する方法です。採用管理システムを取り入れることで、人件費のカットや余計な作業時間を大幅に削ることができます。

特におすすめなのは、ディップ株式会社が提供している人材派遣会社向けの、「採用ページコボット+面接コボット(採用特別プラン)」です。

特別プラン

採用ページコボット」は、派遣会社にとって重要な採用ページの立ち上げが自社で簡単にでき、案件の入れ替えや削除も一画面で素早く行えます。月額費用が固定で追加費用も一切ありません。

また、せっかく応募が集まっても面接ができなければ採用数が増えません。そこで「面接コボット」の併用が重要です。

面接コボット」では365日24時間自動返信機能により面接日時をロボットが調整してくれます。面倒なラリーをする手間が省け、効率良く面接率を挙げることができます。

両方のサービスがセットになっているのが「採用特別プラン」であり、月々25,000円からはじめられる、安価な価格設定も魅力的です。求人広告「バイトル」のAプランへの掲載も無料でついてくる充実した内容で、多くの派遣会社におすすめの特別プランです。

採用コストを削減する際の注意点

採用コストを削減するときは、次の2つの点に注意して進めましょう。

注意点

・必要以上に削減しないように気をつける
・一時的に応募総数が減る可能性を理解しておく

必要以上に削減しないように気をつける

1つ目は、採用コストを削ろうとして必要な部分までカットしてしまうことです。

何もかも安価なサービスや無料のサービスに乗り換えてしまうと、採用コストは下がるかもしれませんが、他の部分で必ず不具合が出ます。人手不足を解消するための採用活動で、人手が足りなくなってしまったり、集客力が弱くなったりするでしょう。

採用コストを削減する際には、「本当にいらないのか?」を多角的に判断することが重要です。一つの結果だけを見て決めてしまわないように気をつけてください。

一時的に応募総数が減る可能性を理解しておく

2つ目は、採用コストを削減した際に、一時的に応募の総数は減る可能性が高いことです。

これまでのやり方を大きく変更したりカットしてしまったりした場合、過去とまったく同じように母集団を形成するには時間や手間がかかります。この点については、理屈でわかっていても焦ってしまう企業が多いです。

「あらかじめ応募数が減ることを想定して閑散期に合わせる」「効果振り返りの際にもかならず削減したことを踏まえて長いスパンで改善策を考える」などの対策が必要になります。

まとめ

採用コストを少しでも抑えたいということは、どの派遣会社でも同じ悩みかと思います。今回お伝えしたことをきっかけに、採用手法の見直しや追加、コストカットについて整理してみてください。

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