潜在ニーズの引き出し方にはコツがあります。「なぜですか?」と質問攻めにするのではなく、自然な流れで潜在ニーズに気付いてもらわなければなりません。
事前に顧客情報を調査したうえで、いくつかのパターンを用意し、シミュレーションをしておくと柔軟な対応が可能です。
この記事では、顧客の潜在ニーズの引き出し方について解説します。潜在ニーズを引き出せる質問例やうまく引き出すコツもまとめました。
潜在ニーズとは
潜在ニーズとは、顧客が気付いていない隠れたニーズのこと。潜在ニーズを引き出すには、質問力がカギとなります。まずは、うまく引き出すために理解しておきたいニーズとウォンツについて簡単に解説します。
ニーズとウォンツ
潜在ニーズを知るには、まずニーズとウォンツについて理解を深めることが大切です。混同されやすい言葉ですが、ニーズとウォンツは以下のようにそれぞれ意味が異なります。
- ニーズ:欲求・目的
- ウォンツ:手段・希望
「ニーズ(needs)」を直訳すると「必需品」です。具体的にわかりやすい欲求を表しています。一方、「ウォンツ(Wants)」の意味は「欲求」です。ニーズを満たすための具体的な手段を表しています。
両者について、具体例をあげると「眠気を覚ましたい(ニーズ)」という欲求を満たすためにとる手段が「コーヒーを飲む(ウォンツ)」といった感じです。ニーズとウォンツで言語化しやすいのは、ウォンツであることが多く、ニーズは言語化できていないことが多いものだと理解しておきましょう。
潜在ニーズと顕在ニーズ
潜在ニーズとは、顧客が明確に自覚していない潜在的に存在するニーズのことです。対して顕在ニーズとは、顧客がはっきりと自覚している欲求や要求を指しています。
ニーズが顕在化していれば購買行動につながりやすいものの、欲しいものが明確に決まっていることもあり、決めたプロダクト以外は購入しない可能性があります。
潜在ニーズは明確に決まっていないため、情報を集めている状況です。どんな商品が選べばよいのか深く理解していない顧客の潜在ニーズを顕在化できれば、購入してくれる可能性は高くなります。
つまり、顧客に購買行動を起こさせるには、潜在ニーズを何らかの形で顕在化させなければなりません。
潜在ニーズを引き出すことの重要性
営業やマーケティングにおいて、なぜ顧客の潜在ニーズを引き出す必要があるのか、潜在ニーズを引き出すことの重要性について2つ解説します。
1. 新規顧客を獲得するため
顧客の潜在ニーズを引き出すことで、顧客が自覚していないニーズを発見し、ニーズを満たすための提案がしやすくなります。もし、自社商品やサービスでニーズを満たすことができれば、購入につながりやすくなるというわけです。
近年はインターネットの普及により、顧客の購買行動も複雑化しています。新規顧客の獲得や市場を開拓するためには、顧客の潜在ニーズを引き出すことが重要です。
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2. 顧客の満足度を高めるため
潜在ニーズを引き出す重要性として、顧客満足度の向上があげられます。顧客が自覚していない課題を発見し、解決することができれば明確な課題を解決できるよりも、大きな満足感を与えることが可能です。
自分にとって良い商品やサービスを見つけた顧客はリピーターとなり、LTV向上にもつながります。LTVとは「顧客生涯価値」のことで、顧客が取引を開始してから終了までの期間にもたらす利益の指標のことです。
LTVが向上することで売り上げの安定につながると考えることができます。
潜在ニーズの引き出し方
潜在ニーズの引き出し方には、以下の3つのポイントがあります。
- ウォンツから潜在ニーズを引き出す
- 「なぜ」を繰り返す
- 質問の仕方を工夫する
それぞれ簡単に解説します。
1. ウォンツから潜在ニーズを引き出す
潜在ニーズの引き出し方は、顧客のウォンツ(欲求)に着目することから始めます。顧客の最初の要望は、ウォンツであることが多いためです。
ウォンツは顧客自身が意識しているため、言葉にしやすく、ヒアリングでも欲求としてすぐに伝えることができます。このウォンツから潜在ニーズを引き出すには、質問の仕方が重要です。
顧客が「○○してほしい」と伝えたときに、「○○してほしいのはなぜですか?」と質問します。顧客自身にウォンツのきっかけを考えてもらうことで、意識していなかった潜在ニーズを掘り起こすことが可能です。
ウォンツを聞いたときに、潜在ニーズに気付いてもらうための適切な質問がカギとなります。
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2. 「なぜ」を繰り返す
ウォンツを聞いて質問をしたら、すぐに潜在ニーズを引き出せるわけではありません。自覚していない意識に気が付いてもらうには、「なぜ」を繰り返して深く掘り下げていく必要があります。
「なぜコーヒーを飲みたいのですか?」に対して「眠気を覚ましたいんです」と答えたら「なぜ眠気を覚ましたいのですか?」「なぜ仕事に集中したいのですか?」など、回答にあわせて「なぜ」を繰り返していきます。
この方法は潜在ニーズを掘り下げるための流れであり、単純に「なぜ」を繰り返すことで不快に感じる人も少なくありません。そのため、実際の商談では顧客とのやり取りをふまえて、質問の仕方を工夫することが大切です。
3. 質問の仕方を工夫する
「なぜ」と繰り返し質問をするのは、御用聞き営業やアンケート調査のような形になり、自然な形で潜在ニーズを掘り起こすのは難しいものです。「なぜ」ばかりの質問をされるのは、不快感を覚える人もいます。
自然に顧客から聞き出すには、商談のやり取りのなかで顧客の声をしっかりと聞く「傾聴力」が大切です。
顧客とのやり取りで新たなビジネスチャンスにつながるウォンツが発見できる可能性もあります。自然な会話の流れで潜在ニーズを引き出し、解決してもらえれば大きな信頼を得ることも可能です。
潜在ニーズを引き出す質問例
潜在ニーズの引き出し方は質問の仕方が大切です。
ここでは、顧客からうまく潜在ニーズを引き出すための質問例をケースごとに紹介します。
ケース1. 業務の効率性を高めたい
顧客「業務の効率性を高めたい」
営業「なぜですか?」
顧客「昨年から業務量が増えて手が回らなくなっている」
営業「なぜ業務量が増えたのですか?」
顧客「別部署の業務を抱えることになり、一人あたりの負担が増えました」
営業「どのような業務が主に負担となっていますか」
顧客「リスト作成などの事務作業です。対応できるツールが古く、進捗が悪くて困っている」
ここから引き出せた潜在ニーズは「事務作業の効率化を図るためのツールの導入」となります。
もし自社で潜在ニーズの解決につながる業務支援ツールを扱っていれば、顧客の満足度向上につなげることが可能です。
「業務の効率性を高める」ためには、ほかにも以下のような手段が考えられます。
- 人員の増加
- 人材育成(研修など)
- 他業務の削減
ケース2. 契約率を高めたい
顧客「契約率をあげたいです」
営業「なぜですか?」
顧客「若い従業員の契約率が低い」
営業「何か変化がありましたか?」
顧客「経験豊富な人材が他部署へ異動になった」
このやり取りから導き出される潜在ニーズは「ノウハウの共有」です。経験豊富な人材のノウハウをすべての従業員で共有できれば、全体の契約数を上げることができます。
「契約率を高めたい」なら、以下のような手段も考えることが可能です。
- 業務支援ツールの導入
- 業務の分担
- 営業教育の実施
潜在ニーズをうまく引き出すコツ
潜在ニーズを引き出すには、以下の3つのコツがあげられます。
- 目的を明確にする
- シミュレーションをしておく
- SPIN営業を意識する
それぞれ簡単に解説します。
1. 目的を明確にする
潜在ニーズを引き出すには、まず達成したい目的を明確化します。目的を設定するときは、実現可能な範囲で決めるのがコツです。
難しそうな場合でも、ある程度イメージとして描いておくことで、商談の方向性を定めることができます。
たとえば「部署内の円滑な情報共有」や「業務プロセスの改善」などがあげられます。これらの目的を達成するために、現状の課題を把握したうえで改善に向けた解決策を提示することが可能です。
ただし、潜在ニーズの引き出しから自社の商品・サービスの提案につなげるには、ある程度やり取りを重ねる必要があります。段階的に商談を進めることで、自然に潜在ニーズを引き出すことができます。
2. シミュレーションをしておく
つぎに行うのは商談のシミュレーションです。ウォンツからどのように潜在ニーズを引き出すか、顧客から出る意見を想定して、事前に回答を決めておきます。
いくつかパターンを用意しておくと、想定外の回答がきても柔軟な対応が可能です。
とくに「なぜ」の質問はバリエーションをもたせておきましょう。何度も「なぜ」を繰り返されると、顧客に負担をかけてしまいます。
「要するに~~ということですか?」など、こちらからも提案などを投げかけて、顧客の反応によって使い分けられるようにしておくことをおすすめします。
3. SPIN営業を意識する
SPIN営業とは、状況質問→問題質問→示唆質問→解決質問で、顧客から潜在ニーズを引き出す営業手法です。
SPIN営業を実践するには、コミュニケーション力やヒアリング力が必要とされるため、うまく質問ができるように何度もロープレを繰り返して身につけましょう。
SPIN営業を実践するときは、事前の準備が重要です。あらかじめ顧客情報などのデータを収集・分析し、商談に向けて整理しておかなければなりません。
まとめ:潜在ニーズをうまく引き出して売上アップにつなげよう
潜在ニーズとは顧客が自覚していない要望のこと。うまく引き出すことができれば、信頼関係を構築できるだけではなく、新たなビジネスチャンスの発見につなげることが可能です。
こうした商談で得た情報をまとめて管理するのにおすすめなのが「HRコボット for アポ獲得支援」です。トークスクリプトやヒアリング結果を共有できるため、テレアポの情報をもとに効果的な営業活動を行えます。
遠隔地にも営業がしやすくなることから、新規開拓営業の件数増加とあわせて新たなノウハウも蓄積することが可能です。