アカウント営業(セールス)とは

昨今、さまざまな営業手法を取り入れて、成果を挙げている企業が多くなってきました。その中で注目を集めているのが、アカウント営業(アカウントセールス)です。

アカウント営業とは、アプローチをする対象を絞って、関係性を深めて成果につなげていく営業手法です。しかし、ことばだけは聞いたことがあっても、他の営業手法とどのように違うのか、どうやって進めれば良いのかを理解している人は多くありません。

そこ今回は、アカウント営業とはという基本的なところから、他の営業手法との違い、効果的な進め方や必要なスキルについてまで解説します。

アカウント営業(アカウントセールス)とは

アカウント営業(アカウントセールス)とは、アプローチを行う顧客を絞り、その顧客に対してのヒアリング等を通し、関係性を深めて商談などを行う営業手法のことです。つまり、顧客の情報を深く収集して現状の課題を把握し、課題を解決するような提案を行うことが求められます。

アカウント営業に力を入れることで、顧客についての深い理解に加え、受注率や売上の向上につながりやすくなります。加えて、顧客との関係性が深まるため、一過性ではなく長期の関係を築くことにも貢献します。

アカウント営業が重要視される背景

昨今、多くのモノやサービスについて簡単に情報を集められる時代になってきています。背景には、インターネット環境の整備とパソコンやスマートフォンの普及があります。

総務省が発表した「令和4年版 情報通信白書」によると、スマートフォンの世帯保有率は88.6%となっており、10年前と比較すると約3倍の保有率にまで上昇しています。仕事においても、スマートフォンを活用していつでもどこでも必要な情報を得られるようになりました。

つまり、顧客は多くの情報を簡単に得られるようになったため、よりモノやサービスの比較を行い、より価値を感じるものを購入するようになってきたのです。類似商品やサービスが多くなってきている中で、単純に商品を売るだけでなく、顧客との関係性を重視し、より価値を感じてもらえるような施策が必要になってきました。

こうした背景から、アカウント営業への注目が増してきているのです。

アカウント営業と他の営業の違い

続いては、アカウント営業と他の営業手法の違いについて解説します。それぞれの営業手法との違いについて理解することで、よりアカウント営業が求められている理由がわかります。

ソリューション営業との違い

ソリューション営業とは、顧客の課題を解決するためのソリューション(解決策)を提案する営業手法のことです。既存顧客や見込み顧客の課題をヒアリングし、課題を解決する商品やサービスを提案して成果につなげていきます。

アカウント営業との大きな違いは、顧客との関係性の深さです。前述したように、ソリューション営業の場合は見込み顧客など、これから自社と関係を持つ可能性がある顧客に対しても提案を行うため、顧客との関係性はアカウント営業よりも深くないケースもあります。

どちらが良い悪いということではなく、重視するものが異なるということです。アカウント営業は、より「顧客との関係性」を重視するのに対して、ソリューション営業は「課題の解決」を重視していきます。

そのため、アカウント営業は顧客の対象を絞って営業活動を行いますが、ソリューション営業の場合は、自社の製品やサービスで課題を解決できる顧客であれば対象となるため、少し広範囲に営業活動を行います。

ルート営業との違い

ルート営業とは、すでに自社と取引のある顧客に対して、改めてアプローチをかけていく営業手法のことです。すでに顧客との関係性が構築されていることが多いため、御用聞きのような側面もあります。

アカウント営業との違いは、「担当する顧客数の数」や「アプローチする対象」です。

ルート営業の場合は、一度取引を行った企業が対象となり、現状を確認して営業を行っていくため、担当する件数は多くあります。

一方で、繰り返しになりますが、アカウント営業の場合は顧客との関係性を重視するため、担当する顧客の数は少なくなります。

また、アプローチする対象は、ルート営業はすでに取引のある企業のみであることに対して、アカウント営業は見込み顧客に対してもアプローチを行っていきます。

こういった点が、アカウント営業とルート営業との違いです。

アカウント営業のメリット

アカウント営業を行うメリットとしては、主に次の4点が主に挙げられます。

メリット

・成果につながりやすい
・顧客ロイヤリティの向上になる
・LTVの向上になる
・他の顧客へと広がる

それぞれのメリットについて解説していきましょう。

成果につながりやすい

アカウント営業は、成果につながりやすい営業手法であることが大きなメリットです。なぜなら顧客との関係性が深くなるため、より顧客の現在の状況や課題、ニーズや組織体制などを細かく情報収集ができるようになり、精度の高い提案を行えるようになるからです。

営業において、相手のニーズを捉えた提案は、売上を上げるために必須だといえます。長期的なアプローチやフォローによって関係を築き、信頼を得ることでさまざまな提案を受け入れてもらえます。

適切な提案を続けていけば、成果は自ずとついてきやすくなります。

顧客ロイヤリティの向上になる

アカウント営業は、顧客と深い関係性を構築する営業手法であるため、ときには専任に近い形で顧客と接することになります。単純に顧客と接する機会が多くなるため、顧客ロイヤリティの向上にもつながります。

顧客ロイヤリティとは、自社や自社が提供している商品やサービスに対して、愛情や信頼を感じることを指します。顧客ロイヤリティが向上すれば、簡単に他社に乗り換えられることもなくなるため、経営の安定性にも貢献できます。

きちんとしたコミュニケーションはもちろんのこと、顧客に価値を感じてもらえるような提案を行うことが大切です。

LTVの向上になる

LTVとは、「Life Time Value」の頭文字を取ったもので、日本語訳では顧客生産価値となります。顧客が生涯の中で、自社にいくらの利益をもたらすかの総額を意味しています。

前述したように、アカウント営業は顧客ロイヤリティの向上を期待できます。顧客ロイヤリティが向上すれば、自社と長期的な取引を行ってくれるようになり、利益も大きくなるとことが考えられます。

また、マーケティング用語の中に「1:5の法則」というものがあります。「1:5の法則」とは、新規顧客を獲得するためのコストは、既存顧客を維持し続けるよりも5倍の費用がかかるというものです。

つまり、新規顧客の獲得に力を入れるよりも、アカウント営業に力を入れる方が、自社の利益につながる可能性は高いということです。アカウント営業に力を入れれば、顧客は継続的に自社と取引がされるため、LTVの向上につながっていくでしょう。

他の顧客へと広がる

アカウント営業を行うことで得た経験や知見、ノウハウは、他の顧客へと広げることも可能です。同じ業界の同じ規模の顧客が抱えている課題は、似たようなものも少なくないからです。

また、営業活動は属人的になりがちですが、アカウント営業の活動内容を部署単位などで共有することで、他の営業も参考にすることが可能です。このように営業活動を行えば、より効率的になり、営業の質も上がります。

アカウント営業を効果的に進めていく手順

実際にアカウント営業を効果的に進めていくには、きちんとした手順に沿って進めていくことが大切です。具体的には、次の手順で進めていきます。

手順

・ビジョンとターゲットを策定する
・顧客が抱えている課題の仮説を立案する
・リレーションを強化する
・戦略を立案する
・ソリューションを提示する
・PDCAサイクルを回しリレーションを拡大する

ビジョンとターゲットを策定する

まずは、自社のアカウント営業のビジョンとターゲットを策定していきます。どのような関係性を顧客と築くのか、期間はどれくらいで設定するのかを計画していきます。

ビジョンを策定する際は、顧客目線に立つことが大切です。利益優先に考えるのではなく、顧客は自社のどんな部分に価値を感じてもらえるのか、自社の商品やサービスがどのように活かされるのかを考えることが重要です。

顧客目線で考えられなければ、そもそものターゲット選定が間違った方向にいってしまったり、成果を出すことにつながらなかったりといったデメリットにつながってしまいます。

長期的な関係を構築する必要があるアカウント営業だからこそ、きちんとしたビジョンとターゲットを策定し、戦略的に行っていくことが求められます。

顧客が抱えている課題の仮説を立案する

ビジョンとターゲットの策定が済んだら、実際に顧客が抱えている課題は何なのか、仮説を立てていきます。

仮説の立て方はさまざまです。業界のニュースとなっていることから推測したり、トレンドになっていることから考えたり、企業のIR情報や中期経営計画から考えたりするといった方法があるでしょう。

また、他の顧客が抱えていた課題が、ターゲットの顧客にも当てはまる可能性も考えられます。

なお、あくまでも仮説のため、実際に課題を的中させる必要はありません。仮説を立てることで、顧客に対して具体的なヒアリングを行うことが可能になります。

たとえ仮説が間違っていたとしても、顧客とのヒアリングを通して修正を行えば問題ありません。加えて、仮説を立てることは、自社のことをよく調べてくれているという好印象を与えることにもつながります。

リレーションを強化する

リレーションとは顧客との関係性のことです。何度もコミュニケーションを通してリレーションを強化することで、顧客との人脈を築いていくことが大事です。

たとえば、担当者同士での関係を強化するだけではなく、意思決定権を持っている上層部の人との関係が強化されれば、より深い課題の把握はもちろん、提案が通りやすくなったり、実際に成果を挙げるまでの時間を短縮したりすることにつながっていきます。

戦略を立案する

実際にヒアリングを通して見えてきた課題をもとにして、顧客に対する戦略を立案していきます。

大切なことは、具体的な行動にまで戦略を落とし込むことです。このような課題があるから、このようなプロセスを経ることで解決できるなど、課題の具体化とステップの見える化をわかりやすく表現することが求められます。戦略の中に自社の「独自性」を取り入れることができれば、他社との差別化になります。

また、戦略を立案した際には、顧客のキーマンは誰になるのかまで確認しておくことも大切です。誰がこの課題のキーマンなのか、誰が賛成なのか、誰が反対者になりそうかなどまで落とし込むと、戦略により具体性を持たせられます。

ソリューションを提示する

実際に立てた戦略をもとに、顧客の課題を解決できるソリューションを提示します。なぜ自社なのかといった価値をアピールすることも大切ですが、あくまでも顧客目線でメリットを伝えることが大切です。

目線を間違えてしまうと、顧客に提案が刺さらずに成果につながらない可能性が高くなってしまうため注意が必要です。

PDCAサイクルを回しリレーションを拡大する

ソリューションを提示しても、すぐに成果につながらない場合もあります。その場合は、顧客はどこに引っかかっているのか、どこに懸念点があるのかを確認しながら進めていくことが大切です。

また、これまでのヒアリングからの流れを振り返りPDCAサイクルを回していくことで、次のアクションにつなげることも大切です。

成果につながらない場合は、リレーションが薄い可能性もあります。行動や活動を見直して、継続的にアカウント営業を行っていくことが必要でしょう。

アカウント営業に求められるスキル

最後に、アカウント営業に求められるスキルについて解説しましょう。求められるスキルには、主に次の3つが挙げられます。

求められるスキル

・コミュニケーションスキル
・仮説構築スキル
・ビッグデータ解析スキル

コミュニケーションスキル

顧客との関係性を深めていくうえで、コミュニケーションスキルは欠かせないスキルといえます。関係性の構築はもちろん、顧客の課題を正確に把握しなければ、適切な提案にはつながらないからです。

また、コミュニケーションを重ねていく中で、顧客と課題の認識について擦り合わせなども行っていくことも求められます。そのため、アカウント営業で成果を出すのであれば、コミュニケーションスキルは必須といえます。

仮説構築スキル

仮説構築スキルとは、顧客の課題がどこにあるのか論理的に考えられるスキルのことです。

仮説は根拠を持って構築することが大切です。そのためには、多くの情報を収集するとともに、顧客の状況の把握なども欠かせません。

表面的に顧客を理解するのではなく本質的に理解しなければ、具体的なソリューションを提示することはできないでしょう。

また、顧客が抱えている課題は一つだけとは限りません。複数の課題を抱えている可能性もあるため、複数の仮説を立てられるだけの深掘りをすることが求められます。

ビッグデータ解析スキル

仮説やソリューションを提案した際に説得力を持たせるためには、客観的なデータが必要です。

顧客に対してのヒアリングは重要ですが、ヒアリングだけでは見えてこない課題も存在している場合があります。そういった際に必要なのが、データの活用です。

昨今、ビッグデータを活用して客観的な解析を行うことが主流になりつつあります。ビッグデータの解析結果をもとに仮説や提案を行えば、より説得力があり精度の高いものとなります。

まとめ

さまざまな情報が手に入る現代だからこそ、顧客に価値を感じてもらうことは大切になります。そのためには、アカウント営業を通して顧客との関係性を深めることが必要になります。

アカウント営業は、しっかりと戦略を持って進めていくことで、顧客ロイヤリティの向上などにつながっていきます。成果にもつながりやすいため、ぜひ積極的に取り入れてみてください。

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