営業方法

顧客の獲得は事業を成長させる上で不可欠な取り組みで、そのためには優れた営業活動を実現しなければなりません。一口に「営業」といってもそのアプローチはさまざまで、ターゲットや会社の状況に応じた営業手法の選択が必要です。

今回は、顧客獲得につながる営業方法や、営業の成果を高めるためのポイントについて解説します。

営業の種類は大きく2種類に分けられる

一般的に、営業活動は以下の2種類に分けることができます。それぞれの方法の特徴について理解しておきましょう。

アウトバウンド営業

アウトバウンド営業は、企業が見込み客に向けて主体的に働きかける営業手法全般を指します。「営業」という言葉を聞いて最も連想されるのはアウトバウンド営業で、昔ながらの訪問営業などはこの方法の代表例といえます。

アウトバウンド営業を行う際には、あらかじめターゲットを絞り、営業先リストを参考にしながら担当者が根気よく営業をかけるプロセスが発生します。

営業先でのトークスキルや見込み客の興味関心を惹くコピーライティング能力が試されますが、その前段階として高い関心度を有した見込み客が掲載されたリストを作成できているかどうか、というところもポイントになります。

現場での技術力だけでなく、周到な事前準備にも力を入れる必要があるのがアウトバウンド営業です。

インバウンド営業

アウトバウンド営業とは対照的な手法を採用するのが、インバウンド営業です。インバウンド営業は、企業ではなく見込み客が主体となり、自社商品の契約へとつなげるための方法です。

インバウンド営業において、企業が取り組むのは、自社や自社製品に関連する情報の発信です。インターネットやセミナーなどを通じて自社製品の需要を喚起し、見込み客からの問い合わせ対応などを創出する施策がインバウンド営業のやり方です。

ある程度ターゲットに目星を付けて施策を実行するものの、具体的な営業リストをあらかじめ用意する必要はなく、とにかく見込み客からのアクションを待ちます。長期的な取り組みとなるものの、自社製品についての関心が強い見込み客を創出できるため、高い成約率が期待できます。

アウトバウンド営業のメリット

アウトバウンド営業とインバウンド営業は、それぞれに独自の強みがあることから、多くの企業で併用されています。ここでは、アウトバウンド営業のメリットについて解説しましょう。

メリット

・自社で営業をかけたいターゲットを選べる
・短期間で成果を挙げやすい
・自社のペースで営業活動ができる

自社で営業をかけたいターゲットを選べる

アウトバウンド営業は、自ら営業リストを作成してアプローチをかけるターゲットを選定するため、見込みが高そうな対象に対して主体的に行動することができます。

インバウンド営業は見込み客からのアクションを待つ必要がありますが、アウトバウンドの場合は関心のありそうな見込み客に対して、機を逃すことなく接近できることが強みです。

短期間で成果を挙げやすい

アウトバウンド営業は自分のタイミングで、見込みの高そうな好きなターゲットに対して主体的にアプローチできるので、短期間で成果を上げやすいことが特徴です。

まだ事業を始めて間もない場合、既存顧客もいない中で事業を継続しなければならないため、とにかくお客さんを多く集める必要があります。そんなときには、アウトバウンド営業で見込みのありそうなターゲットを探し、少しでも収益化につなげることで、事業を早く軌道に乗せられるようになります。

自社のペースで営業活動ができる

アウトバウンド営業の場合、こちらからアクションをかけなければ新しい顧客が増えることはないため、急に注文が殺到して社内がパンクしてしまう心配はありません。

顧客の数が増えてきたなというタイミングで営業規模を縮小し、別の業務にリソースを配分できるため、無理のない組織活動を実現できます。

アウトバウンド営業のデメリット

短期間で顧客を開拓できるなどのメリットがある一方、アウトバウンド営業には注意しておくべきデメリットも存在しています。

デメリット

・営業の成功率が低い
・営業活動に人手を要する
・見込み客との関係が悪化する場合がある
・業務が属人化しやすい

営業の成功率が低い

アウトバウンド営業はアプローチに対しての営業の成功率が低く、場合によっては徒労に終わってしまう日もあることを想定しておきましょう。

会社にブランド力がなかったり、担当者のスキルが未熟だったりするうちは、たとえ見込みがありそうな顧客であっても製品に関心を持ってもらえず、なかなか成約が得られないことも多くあります。

また、優れた営業リストが用意できなければ、リストをなぞるように営業をかけてもまったく成約につながらないことも珍しくなく、意味のない営業活動に時間をかけてしまうこととなります。

営業活動に人手を要する

自社に十分な営業担当者を配置できているのであれば、多少成約率が低くともアウトバウンド営業を実践することは有効です。しかし、満足な数の担当者を揃えられていない中で、無理にアウトバウンド営業を実行しても、割にあう営業効果を得られるとは限りません。

アウトバウンド営業は、ある程度人海戦術に頼ることで成果につなげる特性を持っているため、人材不足が各社で進む近年においては、その効果も見直しが進んでいます。人材不足の中でも効率的な営業を実現したい場合には、インバウンド営業を織り交ぜることが大切です。

見込み客との関係が悪化する場合がある

アウトバウンド営業は、成果を焦って見込み客に対して悪印象を与えてしまう場合もあるため、担当者のスキルに依拠しやすい点も課題です。何度も同じ見込み客に繰り返し電話や訪問営業を行ってしまといいったことは典型的なミスで、しつこい営業活動で成約の見込みがなくなってしまう可能性があります。

アウトバウンド営業を成功に導くためには、担当者の教育と見込み客の管理に力を入れる必要があるでしょう。

業務が属人化しやすい

アウトバウンド営業は、経験が豊富な担当者や業界でのコネクションの強い担当者に成果が集中してしまいやすいため、経験の浅い新入社員に成果が期待できないという問題点が挙げられます。

先輩社員から適切なフィードバックを受けたり、有力な見込み客リストを共有してもらえたり、引き継ぎ体制を整えたりしなければ、社内に営業ノウハウを蓄積することもできないため、事前に運営体制を見直すことが大切です。

主なアウトバウンド営業の方法

アウトバウンド営業を実践するにあたって、採用されているのは主に次の方法です。

デメリット

・訪問営業
・テレアポ
・メール営業
・レター営業
・問い合わせフォーム営業
・SNS問い合わせ営業

訪問営業

訪問営業は、アウトバウンド営業の代名詞ともいえる手法です。見込みのありそうな営業先へ直接担当者が赴き、ニーズの有無を確認したり、新商品の紹介を行ったりします。

対面での営業活動は、交通費がかかるものの、マンツーマンで関係構築ができるといったメリットを挙げられます。ゆっくりと関係を強化していきたい場合に効果的な方法です。

テレアポ

テレアポはいわゆる電話営業で、営業先に電話をかけることで商談アポの獲得などを行います。訪問営業同様、見込み客とリアルタイムでのコミュニケーションを取れるため、関係強化や直近の悩み事のヒアリングなどに役立てられます。

メール営業

メール営業は、電子メールを使って営業活動を行う方法です。メールアドレスさえあれば誰にでも送付することができ、移動に伴う負担もかからないため、効率良く運用できる手法の一つです。

とにかく数をこなして、少しでも多くの人の関心を集めたい場合には効果的な方法です。

レター営業

レター営業は、紙の手紙や冊子を営業先に送付することでアプローチをかける方法です。紙媒体はメールとは異なり、冊子のデザインにこだわったり文面にこだわったりできる余地が残されているため、電子メールよりも興味を持ってもらいやすくなります。

問い合わせフォーム営業

問い合わせフォーム営業は、企業がコーポレートサイトに設置している問い合わせフォームから営業活動を行うものです。メール営業のような感覚で運用することができ、直接担当者につないでもらいやすいことから、多くの企業で採用されている手法です。

SNS問い合わせ営業

SNS問い合わせ営業も、上記の問い合わせフォーム営業のような形式で運用する営業活動ですが、こちらは企業のSNSアカウントにアプローチをかけるものです。

企業が公式アカウントとして運用しているSNSアカウントに対して、営業メッセージを送付し、興味関心を持ってもらう方法です。SNSを積極的に運用している企業に対して有効な手法といえます。

主なインバウンド営業の方法

続いて、インバウンド営業の方法も確認しておきましょう。

インバウンドの営業方法

・セミナー・ウェビナー
・展覧会
・ホワイトペーパー
・SNS
・YouTube
・オウンドメディア

セミナー・ウェビナー

セミナーは自社の専門領域のトピックについて話し合ったり、最新情報を公開したりするためのイベントです。オンライン上で実施するセミナーはウェビナーと呼ばれ、その領域に関心のある参加者が集まります。

自社の専門性をアピールする場であるとともに、その領域の課題をいかにして自社の製品が解決するか、ということを紹介できる場となるので、問い合わせ増加が期待できます。

展覧会

展覧会は、イベントスペースで企業がブースを出展し、来訪者に対して製品の紹介や講演を行うイベントです。

自社独自で開催する展覧会も可能ですが、ブランドがそこまで浸透していない場合は大型の展覧会にブースを申し込み、他の企業と肩を並べて参加することで、知名度の向上につながります。

ホワイトペーパー

ホワイトペーパーは、自社に直接問い合わせてきた見込み客に配布する、専門性の高い文書です。直近の市場動向や自社製品の詳しい導入事例など、ネット上などで公開していない情報をホワイトペーパーに記すことで、見込み客の興味関心をひき、問い合わせ数向上につながります。

SNS

上述ではSNSアカウントに営業をかけるという方法を紹介しましたが、インバウンド営業におけるSNSの運用方法は、情報発信に活用するというものです。

日々の会社での出来事を発信したり、新製品の情報を公開したりと、積極的なアウトプットに努めることで、世の中の興味関心をひくことができます。長期的な運用が必要ですが、SNSで発信力が高まれば、SNSそのものが広告塔となって活躍できるため、強力な営業効果を発揮できます。

YouTube

Youtubeを使った動画コンテンツの発信も、インバウンド営業手法の一環として役に立っています。テキストや画像では伝わりにくい、製品の動作状況を動画で発信することで、視聴者に製品への理解を深めてもらうことができます。

社員同士の対談動画やウェビナーなど、さまざまなコンテンツの発信に応用できることも強みです。

オウンドメディア

オウンドメディアは、企業が運営するブログのようなWebの媒体です。マスメディアとは異なり、自社でWebメディアを運営し、好きなように情報発信ができるため、自社のブランディングや伝えたいコンテンツを自由にアウトプットできることが強みです。

自社の独自性を伝えやすい媒体であるため、既存のメディアではオリジナリティが伝わらないという場合に積極活用すると良いでしょう。

インバウンド営業のメリット

インバウンド営業は、近年注目を集めている営業手法です。どのような点に強みを持つのか、確認しておきましょう。

メリット

・少人数で実施できる
・成約率が比較的高い
・長期的な関係構築ができる

少人数で実施できる

インバウンド営業は、少人数での運営が可能な施策であるため、小規模な企業でも充実した営業活動を行えます。オウンドメディアやSNSの運用はわかりやすい例で、企業と見込み客の一対一の営業ではないため、一人の営業担当者が不特定多数の見込み客に対してアピールできることが強みです。

成約率が比較的高い

インバウンド営業は受け身の営業活動であるため、見込み客とコミュニケーションを取る機会はアウトバウンドに劣ります。ただ、受け身な活動である分、コンタクトを取ってくる見込み客の自社への関心は高く、成約につなげやすい状態であるケースが多い傾向にあります。

そのため、とにかく数を打って成約を獲得するアウトバウンドよりも、見込みの高いターゲットの成約を確実に取るインバウンドの方が、成約率の面では優れた結果が得られます。

長期的な関係構築ができる

インバウンド営業は、押し付けがましい営業活動ではなく、あくまで見込み客が主体となる営業手法です。積極性の面ではアウトバウンドに劣りますが、見込み客に不快感を与えるリスクも小さいため、長期的に関係を構築しやすい手法です。

短期間で成果は得られなくとも、中長期的に確実に顧客を獲得できる施策です。

インバウンド営業のデメリット

インバウンド営業は確かな成果が期待できる一方で、運用に際しては注意すべきポイントもあります。

デメリット

・成果が現れるのに時間がかかる
・戦略的な集客施策が求められる

成果が現れるのに時間がかかる

インバウンド営業は、成果が得られるまでに時間がかかることが課題とされています。オウンドメディアやSNSで集客をするためには時間をかけて取り組む必要がある上、セミナーに参加してもらうためには、ある程度会社の知名度がなければ十分な集客は期待できません。

そのため、短期間で成果を得るためには、アウトバウンド営業も実施する必要がある点には注意が必要です。

戦略的な集客施策が求められる

インバウンド営業で成果を得るためには、戦略的に各施策を実行する必要があります。闇雲にSNSやオウンドメディアを運営しても、自社製品に関心を抱いてくれるユーザーを発掘することはできないためです。

インバウンド営業で少しでも短期間で成果を得るためには、事前に営業戦略を固めておく必要があります。自社製品の強みを洗い出し、どんなターゲットに刺さるのかを把握した上で、彼らに最適な集客方法を検討する必要があるでしょう。

営業の成果を高めるためのポイント

アウトバウンド営業もインバウンド営業も、それぞれ独自の強みがあります。これらの施策を有効活用するためには、次のポイントを押さえて営業活動に臨むことが理想的です。

ポイント

・長期的な関係構築を前提として営業を行う
・アップセル・クロスセルを意識した戦略を立てる
・アウトバウンドとインバウンドを併用する

長期的な関係構築を前提として営業を行う

営業活動は、長期的に見込み客と良好な関係を保つことを前提として行う必要があります。

今やあらゆる領域で市場の収縮が進んでおり、競合同士が小さくなり続けるパイを奪い合うようなマーケットとなりつつあります。見込み客や顧客を一人ひとり大切にして自社と関係を保ってもらえなければ、いずれ十分な顧客を確保できず、事業を畳まざるを得なくなるためです。

そのため、営業をかける際には一人の人間として見込み客に対して接し、誠意あるコミュニケーションができるよう心がけましょう。

アップセル・クロスセルを意識した戦略を立てる

営業を行う場合、基本商品の成約だけに満足せず、追加で購入してもらえたり、継続的に商品を購入してもらえたりするようアプローチをかけ、単価を高めるよう努めましょう。

いわゆるアップセル・クロスセル施策と呼ばれるもので、購入商品に関連する別の商品も併せて買ってもらったり、購入予定商品を上位商品にアップグレードしたりといった行動を促します。

顧客の数は減少の一途を辿っているため、客単価を高めて利益を増やす取り組みが各社で求められています。

アウトバウンドとインバウンドを併用する

アウトバウンド営業とインバウンド営業は、どちらにも一長一短があるため、状況に応じて併用することが望ましいといえます。

事業を始めたばかりで短期間で成果をあげなければならない場合はアウトバウンドに力を入れ、中長期的にブランド力を高め問い合わせを増やす場合にはインバウンドに力を入れるなど、常に会社の状況を俯瞰し、あらゆる選択肢を考慮できる意思決定が理想的です。

まとめ

積極的に見込み客へアプローチするアウトバウンド営業と、見込み客からの問い合わせを待つインバウンド営業は、うまく使い分けることで高い営業効果を発揮します。

アウトバウンド営業は一対一の関係構築に優れた手法ですが、人手の数を必要とするだけでなく、成約率も期待できないため、長期的な営業施策としては不向きです。インバウンド営業は中長期的な関係構築に適した手法である一方、短期での成果は見込めないデメリットが目立ちます。それぞれの手法がどんな特性を持っているのかを判断した上で、最適な方法を選びましょう。

また、アウトバウンドは訪問営業やテレアポ、インバウンドはオウンドメディアやSNSと、営業アプローチにも多様な種類があるため、自社にあった施策を複数試してみることをおすすめします。

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