派遣元管理台帳

派遣業を行う上で、管理台帳の作成は欠かせない業務です。基本契約書や個別契約書、派遣先・派遣元管理台帳など企業間でさまざまな書類を交わすため、正確に把握できていない方もいるのではないでしょうか?

今回は、派遣元管理台帳について徹底解説していきます。記載事項や具体的な記載内容、台帳の保管ルールについて細かな部分まで理解しておくようにしましょう。

安心して派遣スタッフが働ける労働環境を提供していくためにも、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。

派遣の管理台帳とは

派遣の管理台帳は2種類あります。派遣スタッフを雇用する上で、どちらも非常に重要な書類です。それぞれの特徴を紹介していきます。

  • 派遣元管理台帳
  • 派遣先管理台帳

派遣元管理台帳

派遣元管理台帳とは、労働者派遣法37条で作成と保管の義務が定められている、派遣社員の情報を管理する台帳です。派遣会社が作成するもので、派遣社員がルールに則って働けるように必要な重要書類です。

スタッフ一人に対して、一つ作成する必要があります。作成漏れがあったり、紛失してしまったりすると罰則があります。

派遣先管理台帳

派遣先管理台帳とは、派遣先の企業が「派遣先が講ずべき措置に関する指針」により作成を定められている管理台帳です。派遣社員の労働日数や労働時間などの就業状況を把握するための帳簿で、派遣会社に報告・連絡するときにも必要になります。

本来、雇用主である派遣会社が就業状況を見守る必要がありますが、すべての派遣先に出向いて確認しに行くことは難しいため、派遣先でどのように勤務しているかを記録・管理するために管理台帳が作られます。

派遣元管理台帳と照らし合わせて内容が対になるように作成しておく必要があります。

派遣元管理台帳への記載項目

チェックリスト

派遣元管理台帳に記載する項目は、全部で18項目あります。一つずつ確認していきましょう。

記載項目

・派遣労働者の氏名
・無期雇用派遣労働者か有期雇用派遣労働者か
・派遣労働者が60歳以上の者であるか否かの別
・派遣先の氏名または名称
・派遣先の事業所の名称
・派遣先の事業所の所在地その他派遣就業の場所及び組織単位
・労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
・始業および就業時刻
・従事する業務の種類
・派遣スタッフが従事する業務に伴う責任の程度
・派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項
・その紹介予定派遣労働者に関する事項(紹介予定派遣の場合)
・派遣元責任者および派遣先責任者に関する事項
・休日労働・時間外労働
・派遣受入期間の制限を受けない業務について
・派遣労働者に係る社会保険の被保険者資格取得届の提出の有無
・段階的かつ体系的な教育訓練を行った日時とその内容に関する事項
・キャリアコンサルティングを行った日とその内容に関する事項
・雇用安定措置の内容
・協定対象派遣スタッフであるか否かの別

派遣労働者の氏名

派遣社員の氏名を記載しましょう。

無期雇用派遣労働者か有期雇用派遣労働者か

派遣社員の勤務期間に制限があるかどうか確認しましょう。無期雇用派遣の場合は派遣会社に雇われており、有期雇用派遣の場合は同一事業所で3年以上働けないという「3年ルール」が適用されます。

派遣労働者が60歳以上の者であるか否かの別

派遣社員の年齢が、60歳以上か以下かも記載しておきます。60歳以上の派遣社員は3年ルールの対象から外れるため、勤務期間の制限を受けずに済みます。

派遣先の氏名または名称

派遣先企業の氏名や名称を記載しておきます。

派遣先の事業所の名称

派遣先企業の事業所の名称を記載しておきます。

派遣先の事業所の所在地その他派遣就業の場所及び組織単位

派遣先企業の事業所の住所や、その他に派遣先として就業場所があれば漏れなく記載します。就業場所が複数あるような派遣案件は注意が必要です。

労働者派遣の期間及び派遣就業をする日

派遣期間と派遣就業開始日の記載をします。3年ルールに沿って抵触日を管理する際にも就業開始日は重要な日付ですので、間違えずに残しておきましょう。

始業および就業時刻

就業の際の始業及び就業時刻を明記します。休憩時間がある場合は、その時間についても記載してください。

従事する業務の種類

派遣先で任される業務内容について、できるだけ詳細に記載します。この部分に記載している内容と、個別契約書の記載が食い違ってしまうとトラブルのもとになります。

「一般事務作業」などあいまいな書き方ではなく、「Wordを利用した資料作成や1日5〜10件程度の電話対応と領収書の処理作業」など具体的に記入していきましょう。

派遣スタッフが従事する業務に伴う責任の程度

派遣社員は、役職者のような責任の伴う職務につく際に、その程度について記載する必要があります。リーダーやマネージャーのような役職名にプラスして、部下の人数・トラブルの対処方法・期待されている成果物・就業時間外の対応の有無など、数字で具体的に残しておくようにしてください。

同一賃金同一労働の観点で、同じ責任を持つ業務を行う人材は、正社員も派遣も同じ賃金に合わせる必要があります。責任の程度について記しておくことは、判断材料の一つになります。

派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項

派遣社員から、就業状況に関してクレームを受けることもあります。処理対応した場合、詳しい苦情内容を残し、どのように対処したのかについて経緯を記載しておく必要があります。

具体的には、次の3点を記載しておきましょう。

  • ①申し出を受けるスタッフの情報
  • ②苦情処理の方法
  • ③派遣元と派遣先との連携のための体制(連絡協議会の設置等)

その紹介予定派遣労働者に関する事項(紹介予定派遣の場合)

紹介予定派遣とは、6ヶ月の派遣期間を経て、双方の合意があれば直接雇用に切り替える働き方です。面接があり合否もでる働き方です。

紹介予定派遣の場合は、紹介予定派遣である旨を記載し、面接の合否や紹介の時期、紹介が成立しなかった場合の理由について記載しておきます。

派遣元責任者および派遣先責任者に関する事項

派遣元の責任者名や連絡先を明記しておきます。

派遣先の責任者は労働者派遣法第41条に基づき、派遣先の派遣社員の中から選ばれます。業務内容としては、派遣元への報告・連絡や派遣社員の業務管理、管理台帳の記入などがあげられます。代表として苦情を処理することもあります。

選任する際の観点は次のとおりです。

  • 労働関係法令の知識があること
  • 厚生労働省指定の機関で実施する「派遣先責任者講習」を受講すること
  • 人事・労務管理といった専門的知識を持っているか、相当な期間の職務経験があること
  • 派遣労働者の職務内容の決定や変更などを行う権限を持つ者であること

休日労働・時間外労働

休日労働や残業が発生した場合は、具体的な日数や時間を残しておきましょう。業務日報のように就業状況を細かく記しておくことが重要です。

派遣受入期間の制限を受けない業務について

派遣案件が「派遣受入期間の制限を受けない業務」である場合、その内容について記載しておく必要があります。次の条件の派遣社員は、3年ルールの制限を受けずに働くことができます。

3年ルールの制限を受けない条件

・60歳以上の場合
・派遣元に無期雇用されている場合
・育休や産休など休業している社員の業務を担う場合
・期限付きのプロジェクトに参加していている場合
・1ヶ月の勤務日数が、派遣先の派遣社員の半分以下もしくは10日以下である場合

同じ事業者の下では3年しか働けないのが「3年ルール」ですが、例外ケースの場合それ以上働けるため、期限がわかるものは記載しておきましょう。

派遣労働者に係る社会保険の被保険者資格取得届の提出の有無

社会保険に加入するための届出を提出しているか記載しておきましょう。加入させていない場合は、理由も明記しておいてください。もし手続きの最中である場合や、これから行う場合はその旨を記載しておき、完了したら有の記入を忘れないでおいてください。

段階的かつ体系的な教育訓練を行った日時とその内容に関する事項

派遣スタッフに教育・訓練を実施した場合は、具体的な日時と内容を記載しましょう。教育や訓練に費やした時間数も必要で、派遣法第30条の2第1項によって義務付けられています。

キャリアコンサルティングを行った日とその内容に関する事項

派遣スタッフに対してキャリアコンサルティングを行った場合は、日時と内容を詳しく記載しておきます。

雇用安定措置の内容

派遣スタッフへ雇用安定措置を行った場合は、内容を明記しておく必要があります。

派遣社員は派遣法の中で「3年ルール」という「同一事業所で3年以上働けない」という労働機関の制限があります。雇用安定措置とは、3年ルールの内容を踏まえて、3年以上勤務の見込みがある労働者に対して雇用を継続させる措置のことです。

ちなみに、1年以上3年未満の派遣社員であれば努力義務とされており、派遣元は社員が長く働けるように対策を講じなければなりません。具体的には、次のような措置を指しています。

措置

・新しい派遣先の紹介
・派遣先に直接雇用をしてもらうための依頼
・派遣元での無期雇用
・紹介予定派遣の案内

これら複数を行い、内容と結果を記載しておいてください。

協定対象派遣スタッフであるか否かの別

派遣法が改正された際に追記事項として増えている内容です。

協定対象派遣スタッフとは、派遣会社と労使協定を結び、労使協定方式で就労条件が決まる派遣社員を指します。派遣会社は「労使協定方式」と「派遣先均等・均衡方式」のどちらかを選択し、社員の就労条件を決めます。

近年では、派遣会社の多くは労使協定方式を選ぶところが増えています。というのも、「派遣先均等・均衡方式」の場合、派遣社員の給与と正社員の給与に格差が生まれないようにしなければならず、派遣先企業にとって手間や負担が大きいとされているからです。

台帳未作成の際の罰則

「派遣元管理台帳を作成していなかった」「作成したものの失くしてしまった」という場合、書類不備とされ刑事罰に科される可能性もあります。30万円以下の罰金刑に加えて、業務改善命令や行政指導が入ります。

実は、派遣社員と派遣元の従業員の合計数が5名以下の事業所の場合、作成の義務はありません。しかし、管理台帳がなければ正確な派遣社員の就業状況を把握しにくくなります。

トラブルを回避するため、5名以下の小規模事業者も作成・保管しておくことをおすすめします。毎年多数の事業所で不備が発覚しているほど厳しくチェックされますので、派遣社員が就業する際にはかならず用意し、3年間きちんと保管しておきましょう。

派遣元管理台帳の保管ルール

派遣会社は、派遣契約が終了した日から、派遣元管理台帳を3年間保存しなければならないという決まりがあります。作成から3年ではなく終了から3年間なので気をつけてください。

以前は、派遣元管理台帳は紙面のものしか認められませんでしたが、法改正によりデータベースのものも認められるようになりました。利便性も高くなり作業スピードも早くなるため、派遣会社の作業効率も上がっています。

紛失や破損があっては困りますので、セキュリティレベルの高い場所に念のため複製しておくことがおすすめです。

なぜ3年保管しておかなければならないかというと、派遣就業後にトラブルがあったときに内容を照らし合わせるためです。契約内容と異なっている点やトラブルの責任の所在を明らかにするためにも、最低3年は管理が義務付けられているのです。

まとめ

派遣元管理台帳は、派遣会社が派遣社員を就業させるうえで必ず作成しなければならない重要な書類です。後々のトラブルが発生した際に、適切な対処をするためにも必要です。記載事項に間違いのないように注意深く作成し、管理しておきましょう。

派遣会社では、書類の作成だけではなく求職者を集めて管理することも求められます。優秀な人材を多数雇用するためにも、採用活動に力を入れている会社は多いのではないでしょうか?

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