パートとアルバイトの違いを説明できる?法律上の違いなどを解説

求人を出すときに、パートとアルバイトのどちらで募集を出したら良いのかお悩みでしょうか。パートとアルバイトは法律上に明確な定義はされていません。

ただし、正社員とは待遇面で区別されています。雇用保険や社会保険の加入条件も異なるため、採用するときは理解を深めておくことが大切です。

この記事では、パートとアルバイトの違いについて解説します。社会保険と雇用保険の決まりについてもまとめました。それぞれの違いと社会保険などの加入条件を確認したい採用担当者は、ぜひ参考になさってください。

パートとアルバイトの違いとは?法律上と一般的な違い

パートとアルバイトの違いについて紹介します。法律上で区別が必要な場合、採用側がとるべき対応も変わってくるためです。法律上と一般的な違い、パートタイマーの定義について解説します。

パートとアルバイトの法律上の違いとは

結論「パート」と「アルバイト」に法律上の定義や区別はありません。
ただし「パートタイム・有期雇用労働法」では労働時間によって、正社員とパートタイムが明確に区別されています。

つまり、正社員より短い時間で働く人を募集したいなら、パートとアルバイトでも問題ありません。
採用募集を出すお店によって「パート募集中」や「パート・アルバイト募集!」と表記が異なっていても、問題はありません。

パートとアルバイトの一般的な違いとは

求人募集でパートかアルバイトで出すのかは、企業側が判断します。一般的にパートは主婦(夫)、アルバイトは学生やフリーターという認識をもっている人も多いのではないでしょうか。
これは、それぞれの語源からくる意味が現在の一般的な認識につながっていると考えられます。

パートの語源は「Part timer(パートタイマー)」で「Full time(フルタイム)」の対義語です。時間的に制約のある主婦(夫)が空き時間に働くことを指しています。
対してアルバイトは、学生が学業のかたわらお金を稼ぐことを意味するドイツ語の「Arbeit」が由来です。

そのため、同じ店舗内で同じ立場であっても、主婦(夫)ならパート、学生ならアルバイトと呼び方を変えているお店も少なくありません。

パートタイム労働者の定義

そもそもパートとアルバイトを指す「パートタイム労働者」の定義とは「パートタイム・有期雇用労働法」において以下のように定められています。

1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者

出典:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法の概要

正社員と労働時間が異なる雇用形態には、パートやアルバイト以外にも嘱託や契約社員、臨時社員、準社員などの呼び方がありますが、上記の条件に該当する場合は「パートタイム労働者」です。

パートでもフルタイムで働いているなら、正社員や契約社員、派遣社員と同じように「フルタイム労働者」と区別している企業もあります。

「パートとアルバイト」と「正社員」との違い

「パートとアルバイト」と「正社員」は雇用形態と雇用保険が違います。

「正社員」を指す正規雇用は、労働期間に定めのない無期雇用契約であり、フルタイム勤務が前提です。これは人材を育成することを目的としており、仕事における責任も重く、成果が求められます。

対して「パートとアルバイト」の非正規雇用者は、労働契約の期間に定めがあり、フルタイム勤務とは限りません。正社員の指示を受けて働くことが多く、責任もほとんどないのが特徴です。

さらに正社員の場合、企業規模を問わず、社会保険や雇用保険の加入が義務となっています。パートとアルバイトの社会保険加入は、被保険者の人数や給与など加入要件を満たした場合のみ加入が可能です。

「パートとアルバイト」と「派遣社員」との違い

「パートとアルバイト」と「派遣社員」の主な違いは、雇用主と勤務先です。
「パートとアルバイト」は雇用先と直接雇用契約を結んで働きます。「派遣社員」は、派遣会社と雇用契約を結んだうえで、派遣先の企業で働く労働者です。

労働者は雇用主から指揮命令を受けて働きます。「パートとアルバイト」の場合、勤務先の雇用主に指揮命令権がありますが、派遣社員の雇用主は派遣会社となるため、派遣先は指揮命令を出すことはできません。

そのため、同じ職場でも「パートとアルバイト」と「派遣社員」では指示の出し方が異なってきます。

労働時間は「パートとアルバイト」よりも「派遣社員」のほうが長めです。そのため社会保険に加入することが多いですが、基本的に派遣会社の社会保険に加入します。ただ、福利厚生については、一部派遣先の福利厚生が適用されるケースもあるなど、柔軟性があるのが特徴です。

交通費は、2020年1月の法改正により派遣社員にも支給しなければなりませんが、「パートとアルバイト」への支給は必須ではありません。さらに「派遣社員」は通算雇用期間が1年以上で希望により無期雇用へ転換できることも「パートとアルバイト」との大きな違いといえるでしょう。

年次有給休暇については雇用形態を問わず、勤務開始から6カ月の継続勤務で付与しなければなりません。

パートとアルバイトの待遇

「パートとアルバイト」にどのような待遇を用意したら良いのかわかならい担当者に向けて、具体的な待遇について解説します。

パートとアルバイトの契約期間・労働時間

パートとアルバイトは「パートタイム・有期雇用労働法」で「短時間労働者」と定義されているように、1週間当たりの労働時間や雇用期間が定められています。

正社員などフルタイムの勤務時間は、原則1日8時間・週40時間が上限です。もし、パートとアルバイトでこの上限を超えて働かせた場合、割増賃金を支払わなければなりません。

そのため、パートとアルバイトの勤務時間は法令を遵守するため、1日3~5時間の週2日など、シフト制で午前や午後のみの交代勤務をするのが一般的です。

契約期間は業務内容によりますが、3カ月契約や1年契約など一定の期間を定められたうえで雇用されます。

パートとアルバイトの交通費

パートとアルバイトの場合、交通費や通勤手当の支給は勤務先の判断によって異なります。交通費や通勤手当の支給は法律で定められておらず、企業の就業規則などにゆだねられているためです。

ただし、一般的に正社員に通勤手当が支給される場合、パートとアルバイトに交通費が支給されないのは、同一労働同一賃金違反になります。

正社員に通勤手当が支給されるときは、パートとアルバイトなど雇用形態を問わず、全従業員に交通費を支給しなければなりません。

ただし、本人の都合による転居で遠方からの出勤については、交通費や通勤手当の額が大きくなります。こうしたケースでは距離や上限を設けることは可能です。

交通費や通勤手当を支給する場合、パートやアルバイトなど雇用形態を問わず、採用時に労働条件通知書で明示してください。

パートとアルバイトの残業

パートやアルバイトでも、労働基準法において残業代を支給しなければなりません。
一般的に残業とは、法定労働時間を超えておこなう労働時間を指しています。法定労働時間は「1日8時間・週40時間以内」です。

短時間労働者であるパートやアルバイトの場合、そもそも法定労働時間に満たないため、残業代の計算方法が異なります。

例えば、1日4時間・週8時間以内で採用後、所定労働時間を超えた場合の残業代の計算式は以下の通りです。

通常の時間単価×1.0×所定労働時間を超えた時間

もし法定労働時間を超えた場合は、時間単価に1.25倍を乗じます。

通常の時間単価×1.25×所定労働時間を超えた時間

法定休日の労働は休日手当として1.35以上の割増賃金を支払わなければなりません。

パート・アルバイトの有給休暇

パートとアルバイトでも、以下の2つの要件を満たしていれば、正社員と同様に有給休暇を与えることができます。年次有給休暇の付与要件は以下の通りです。

  • 雇入れの日から6カ月経過している
  • 6カ月以内の労働日の8割以上に出勤している

正社員の場合、上記の要件を満たしていれば10日間の有給休暇を付与しなければなりません。

しかし、パートとアルバイトは所定労働日数が少ないため、週の所定労働日数と継続勤続年数で以下のように付与日数が変わります。

週所定労働日数1年間の所定労働日数雇入れ日から起算した継続勤続勤務期間
6カ月1年6カ月2年6カ月3年6カ月4年6カ月6年6カ月以上
4日169~216日7日8日9日10日12日13日
3日121~168日5日6日6日8日9日10日
2日73~120日3日4日4日5日6日6日
1日48~72日1日2日2日2日3日3日

出典:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています

有給休暇を利用する日を企業が指定することはできません。パートとアルバイトが要件を満たしており、取得を希望していれば応じることが大切です。

パートとアルバイトの産休・育休

パートとアルバイトなど雇用形態を問わず、産休・育休の取得は可能です。
産休・育休は雇用保険の被保険者を対象とした制度のため、雇用契約を結んで働くすべての労働者なら取得できます。

ただし、以下のように取得期間が定められているため、企業は産休・育休制度について正しく理解しておかなければなりません。

産休産前休業:出産予定日の6週間前から
産後休業:出産翌日から8週間
※労基法第65条の1、2
育休育児休業:子どもが1歳になるまで
延長期間:子どもが1歳6カ月になるまで
再延長可能:子どもが2歳になるまで

産前休業の期間は任意のため、企業独自で設定が可能です。ただし、産後休業は母体保護の観点から、出産翌日から8週間と法律で定められています(労基法第15条の2)。

パート・アルバイトだからといって産休・育休を取得させなかったり、解雇など不利益な扱いをおこなったりするのは法律違反です(労基法第19条)。

ほかにも出産後1年以内は、時間外労働、休日労働、深夜業、変形労働時間制の適用、危険有業業務の就業などはさせてはいけません(労基法第64条の3、第66条)。

産休・育休の手当については、扶養内で働いている人と雇用保険の被保険者であるかで対象が異なります。対象者と適用要件を理解したうえで、適切な案内ができるように努めることが大切です。

パートとアルバイトの福利厚生

パート・アルバイトに適用される福利厚生は、加入要件が定められている「法定福利厚生」と企業が独自で提供する「法定外福利厚生」があります。
「法定福利厚生」は対象者の範囲や要件を企業で決めることが可能です。

例えば、まかないや社割などは全従業員を対象としつつ、住宅手当や研修参加などは正社員に限定するといったケースが該当します。

しかし、同一労働同一賃金の観点から、正社員との待遇差を解消するため、同じ仕事をしているのなら、均等・均衡待遇を設けなければなりません。

福利厚生は仕事へのモチベーションや人材の獲得にも大きく影響を与えます。人手不足が進むなかで人材を獲得するには、パートやアルバイトにも同じ福利厚生を適用することが望ましいでしょう。

パートとアルバイトの社会保険・雇用保険の決まり

パートとアルバイトを採用するときは、社会保険や雇用保険の手続きが必要です。ここでは採用時と離職時の手続きに関係する社会保険や雇用契約について解説します。

パートとアルバイトの雇用保険の加入条件

パートとアルバイトでも所定労働日数と雇用期間など、以下の加入条件を満たしていれば加入させなければなりません。

・所定労働時間:週20時間以上
・雇用期間:31日以上の見込みあり
・学生ではない(休学中や夜間学生は加入対象)

また、以下の条件に該当するときは雇用保険の対象外です。

・所定労働時間:週20時間未満
・雇用期間:31日未満
・4カ月以内の季節的事業に雇用される者

雇用保険の加入要件については、雇用保険法改正が可決成立したことで、2028年10月1日より「週所定労働時間が10時間以上20時間未満」へ変更されることが決定しています。

パートとアルバイトを雇用する企業は、こうした法改正や制度変更について理解を深めておかなければなりません。

関連記事:【2023】パートの雇用保険の加入条件は?メリット・デメリット、保険料率を解説

パートとアルバイトの社会保険の加入条件

社会保険制度も改正がありました。2022年から段階的に加入対象の範囲が広がりつつあり、2024年10月から従業員数50人以下の企業で働くパートとアルバイトの方は、社会保険加入が義務です。

以下の要件を満たしているパート・アルバイトは社会保険へ加入させなければなりません。

・所定内労働時間:週20時間以上30時間未満
・所定内賃金:月額8.8万円以上
・雇用期間:2カ月以上の雇用見込み
・学生ではない(休学中や夜間学生は加入対象)

基本的に、昼間学生のアルバイトは要件を満たしていても、雇用保険や社会保険加入の対象にはなりません。

招来を見据えた場合、社会保険加入を望む声は大きいものの、社会保険料の支払いにより手取りが減少することや、企業側の負担も大きくスムーズに進んでいないのが現状です。

国は「年収の壁対策」として「年収の壁・支援強化パッケージ」を展開し、パートやアルバイトの社会保険の適用をおこなった事業所に対して、1人につき最大50万円の助成を決定しています。

人手不足を解消するために法改正や制度変更などが進むなかで採用担当者は、こうした情報をいち早く入手し、理解しておくことが大切です。

パートとアルバイトの退職手続き

パートとアルバイトから退職の希望があったときは、必要に応じて雇用保険と社会保険の手続きをおこないます。

退職届の提出は義務ではないため、口頭でも退職の意思を確認したら就業規則に則って手続きを進めていきましょう。雇用被保険者で社会保険にも加入している場合、以下の3点を渡さなければなりません。

  • 雇用保険被保険者証
  • 年金手帳
  • 退職証明書(労基法第22条1項)

雇用保険被保険者証と退職証明書は、退職後の失業保険(雇用保険給付)の手続きに使用します。年金手帳は入社時に受け取る企業は減っていますが、もし預かっている場合は必ず返却してください。

社会保険被保険者のパート・アルバイトからは、健康保険証を返却してもらいましょう。

パートとアルバイトが関わる税金控除

パートとアルバイトでも、所定労働時間などで所得税や住民税が発生します。扶養の有無などで控除額が異なるため、正しく理解しておかなければなりません。

所得税・住民税の控除

パートやアルバイトでも、時給や労働時間によって所得税や住民税が発生します。どれくらい稼げば所得税や住民税が発生するのか理解していない人もいるため、事前に説明しておくことが大切です。

パートやアルバイトの給与所得の場合、年収162万5,000円まで55万円の給与所得控除があります。さらに所得税と住民税の基礎控除との合計額を超えると、課税対象となり税金が発生します。

<パート・アルバイトの所得税>
給与所得控除額55万円+所得税基礎控除48万円=年収103万円までOK

<パート・アルバイトの住民税>
給与所得控除55万円+住民税基礎控除43万円=年収98万円までOK

扶養内勤務を希望しているパートやアルバイトがいるときは、確かな情報を調査したうえで基準額を超えないようにシフト調整をおこなうことが大切です。

参考:国税庁「家族と税

主婦(夫)の配偶者控除

主婦(夫)をパート・アルバイトで採用するときは、税の扶養だけではなく、社会保険の扶養について説明しておきましょう。
パート・アルバイトの収入によって、主婦(夫)の扶養者が受ける控除額が変わることがあるためです。

扶養者の所得1,000万円以下(給与年収1,220万円)の場合、パート・アルバイトをする人の収入が年間48万円を超えると、配偶者控除を受けられなくなります。

主婦(夫)の所得が48万円を超えると、配偶者特別控除となり所得95万円(給与年収150万円)までなら控除額が満額適用されますが、それ以上稼ぐと段階的に減少していきます。

パート・アルバイトをする主婦(夫)の合計所得額パート・アルバイトをする主婦(夫)の扶養者の合計所得額
900万円以下900万~950万円以下950万~1,000万円以下
48万~95万円以下38万円26万円13万円
95万~100万円以下36万円24万円12万円
100万~105万円以下31万円21万円11万円
105万~110万円以下26万円18万円9万円
110万~115万円以下21万円14万円7万円
115万~120万円以下16万円11万円6万円
120万~125万円以下11万円8万円4万円
125万~130万円以下6万円4万円2万円
130万~133万円以下3万円2万円1万円

出典:国税庁「No.1195 配偶者特別控除

主婦(夫)のパート・アルバイトを採用するときは、面接などで税の扶養と社会保険の扶養とどちらが希望なのかを確認しておくことが大切です。

参考:国税庁「No.1191 配偶者控除
参考:国税庁「No.1195 配偶者特別控除

学生が対象の税金控除

学生アルバイトの場合、勤労学生控除が適用されるため、以下のように控除枠が広がります。

<学生アルバイトの所得税>
給与所得控除55万円+所得税基礎控除48万円+勤労学生控除27万円=年収130万円

<学生アルバイトの住民税>
給与所得控除55万円+住民税基礎控除43万円+勤労学生控除26万円=年収129万円

勤労学生として認められるのは、年齢を問わず、法令で定める学校の学生および生徒です。
学生アルバイトは社会保険の加入義務はありません※。そのため、年収130万円以下(所得75万円以下)なら、手取りの減少を気にせず働いてもらうことができます。

※休学中や夜間学生は加入対象

参考:国税庁「No.1175 勤労学生控除

学生の扶養者の税金控除

学生アルバイトも主婦(夫)のパートと同様に、年収103万円を超えると住民税が発生します。

学生本人の手取りはそこまで大きく減りませんが、扶養者である保護者の年収によっては税負担が大きくなることを伝えておくことも大切です。扶養控除は16歳以上から適用されます。

学生アルバイトの年齢扶養者が受けられる控除額
16歳~18歳38万円
19歳~22歳63万円

もし大学生のアルバイトで年収103万円を超えて働いて、扶養者が受けられる控除額63万円が無くなると約12万円の負担増となるわけです。

これは扶養者の所得税率でも異なります。税負担以外に家族手当が無くなる可能性もあるため、学生アルバイトを採用するときは、扶養者の負担も考慮して説明しておくとよいでしょう。

まとめ:パートとアルバイトの法律上の違いはない!社会保険や雇用保険の加入条件に気をつけよう!

パートとアルバイトの違いについて解説しました。法律上に明確な違いはないものの、雇用保険や社会保険の加入条件などは異なるため、注意が必要です。

とくに同一労働同一賃金の観点から「パートタイム・有期雇用労働法」については採用担当者として理解を深めておかなければなりません。法改正や制度変更などにも対応していかなければならないため、少しでも業務の効率化を目指しましょう。

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