保育士の人手不足はどう解消する?保育士不足の原因や制度を解説

保育士は社会にとって必要不可欠な仕事である一方で、人手不足が問題視されている仕事でもあります。
そのため、保育士の採用がうまくいかずに悩む保育園は珍しくありません。
この記事では、保育士の人材不足の原因や解消のための具体的な方法について解説します。採用活動の改善に便利なツールの紹介もあるので、保育士の採用に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

保育士不足の現状

厚生労働省による調査によれば、令和5年1月時点での保育士の有効求人倍率は3.12倍となっており、これは全職種平均の1.44倍と比べて高い水準となっています。

有効求人倍率が高いということは、保育士を探している保育施設は多いということです。その一方で、保育士資格を持っている人も決して少なくはありません。

潜在保育士という、保育士資格を持っていても保育士として働いていない人を指す言葉があります。

厚生労働省の調査によれば、令和2年の時点で保育士の資格者は約167万人ですが、このうち潜在保育士の人数は約102万人であり、全体の約60%にも及びます。

保育士が人手不足になる原因

前項目で説明した通り、保育士の資格者は多いにもかかわらず保育士の人手不足は解消されません。
潜在保育士が多く、人手不足になってしまう原因は何なのか、本項目で解説します。

給与が低い

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によれば、保育士の平均給与額は約26万円です。これは、全職種の平均給与額である約34万円よりも明らかに低い数値となっています。

保育士を務めるには専門的な知識や技術を習得し、国家資格である「保育士資格」を得る必要があります。そして、子どもたちの命を預かる責任を持った仕事でもあります。

子どもたちの命を預かる重大な仕事を志し、苦労して国家資格を取得した人がこの低い給料に直面してしまうことが、潜在保育士を増やし、人手不足を引き起こす大きな原因の一つです。

業務量が多い

保育士の業務は子どもの保育だけではありません。事務作業やお便りの作成、連絡帳の記入など、子どもを預かっている時間以外にもさまざまな業務をこなさなくてはなりません。

書類仕事に関しては業務時間中には終わらず、仕事を持ち帰る場合もあります。その場合は給料が発生せず、サービス残業になってしまいます。

また、子どもの保育に関しても、親御さんの多様な働き方に対応するため受け入れ時間に幅を持たせているため、土日出勤や夜間・早朝業務が発生しやすくなっています。

こうした業務量の多さによる負担やワークライフバランスの取りづらさも、保育士不足の原因です。

仕事の責任が重い

保育士は、幼児という自分の力では何もできない尊い命を預かる責任の重い仕事です。そのため、責任感が強く、万が一のことがあっては申し訳ないという気持ちから保育士を選ばない人も珍しくありません。

子どもの命に責任を持って預かるということは、子どもの食べるものや遊ぶための遊具など一つ一つに気を配ることなので、責任の重さがそのまま業務としての負担にもつながってしまいます。

また、保護者の方からのプレッシャーで責任を感じてしまう場合もあります。

大事な子どもを預かっているという立場なので、保護者の方から信用されて預けられているという事実を実感すると、それが責任の重さとしてのしかかることがあります。

人間関係が難しい

保育士の仕事は同僚との協力が欠かせないため、人間関係の難しさで悩むことも多々あります。

保育方針やキャリアの長さなど、保育士によってさまざまな面で考え方の違いが生まれてしまうため、それらを擦り合わせながら仕事をすることはとても難しくなってしまいます。

また、保育士は保護者の方との付き合い方も考えなければなりません。
家庭によって教育方針はさまざまです。そのため、ある保護者にとっては行き過ぎと思える指導が、別の保護者にとっては指導不足と思われてしまうこともあります。
保育士が子ども一人一人に対応を変えるのも限度があるため、保護者との人間関係も大きな負担になることがあります。

保育士の人手不足を解消する方法

保育士の人手不足にはさまざまな要因がありますが、その解消のために園ができることにはどのようなものがあるでしょうか。本項目でその方法について解説するので、ぜひとも参考にしてください。

労働条件の見直し

人手不足を解消するためには、労働条件の見直しが欠かせません。賃金を引き上げたり、有給休暇を取得しやすくしたりといった施策でよい条件を提示できるようにしましょう。
賃金などの条件のほかに、キャリアアップ研修を取り入れることも将来的な収入のアップにつながるため、求職者にとっては大きな魅力になります。

賃金やプライベートの確保、将来的な展望などさまざまな面から労働条件を見直すことで、求職者にとって魅力的な職場になります。
当然のことながらコストはかかってしまいますが、その分確実性の高い手段でもあるので実践できないか検討してみてください。

業務効率の改善

業務効率の改善も、職場を働きやすいものにする有効な手段です。業務の棚卸をして、必要な業務と削減できる業務を分けましょう。

また、必要な業務の中には、電子媒体の導入によって効率化できるものも存在します。たとえば、保護者の方との連絡や勤怠管理などに関しては、アプリやツールを活用することで効率をアップできます。
保育士の仕事には、電子化が不可能な業務も数多く存在します。
だからこそ、DX(デジタル化)で業務効率を上げることでどうしても効率化できない業務に注力できるようにすることが、働きやすさを改善し人手不足を解消するために重要です。

風通しのよい職場環境の構築

先述の通り、保育士は人間関係で悩むことの多い仕事です。そのため、風通しのよい職場環境の構築によって人間関係をスムーズにすることが離職の防止と人手不足の解消につながります。
定期的な面談や相談窓口の設置などを行い、職員の意見や悩みなどを把握しやすい体制を整えましょう。即時の解決は難しい場合も、把握しておくことでその後の対応は大きく変わります。
また、このように職場環境を整えることは一人ひとりの仕事のしやすさや職員同士の連携にも関わります。職場環境を改善することが、保育業務全体の質の向上にもつながっていきます。

潜在保育士の復活

保育士資格は持っているが保育士には就いていない潜在保育士が多いというのは、先述した通りです。園の人手不足を解消するには、この潜在保育士に就職してもらうことが大切です。

潜在保育士に保育の場に立ってもらうためには、求人方法を見直すなど、潜在保育士にアプローチできる方法を考える必要があります。
その有効な方法の一つとして、雇用形態を柔軟にすることが挙げられます。たとえば、事情があってフルタイムでの勤務が難しい人でも、アルバイト・パートであれば保育士として働きたいという場合があります。
フルタイムで働ける人材がほしい場合でも、まずはアルバイト雇用で潜在保育士を確保するという選択肢も考えてみてください。

採用ミスマッチの減少

厚生労働省の調査によれば、令和4年の保育士の離職率は9.3%です。一方で社会全体の離職率は15.0%なので、保育士の離職率は低い傾向にあることがわかります。
離職率が低いということは、採用ミスマッチさえ防ぐことができれば長い間在職してくれる可能性が高いということです。しかし、よい人材を他園に取られれば求人応募は減ってしまうということでもあります。
採用時点でのアンマッチを避け、短期での離職を減らすようにしましょう。

アンマッチを避ける具体的な方法として、ツールの活用がおすすめです。
「面接コボットforアルバイト」は、チャットでいくつか質問を行ったうえで、面接に進むかどうかを決められるため、お互いの意思確認をより綿密に行うことができます。
「採用ページコボット」は就業条件や相手に求めるスキルを自動で事前に確認できるため、条件面での双方の擦り合わせをより確実に行えます。

保育士の人手不足解消に向けた国や自治体の対策

保育士の人手不足に関しては国や各自治体も懸念しており、解消のためさまざまな施策を行っています。ただし、これらの施策は補助金の支給など、園が申し込みをしなければ利用できない場合もあります。

本項目では、国や各自治体が実施している保育士の人手不足解消に向けた施策を紹介します。まずはどのような施策があるのかを把握して、利用できるものがあれば積極的に申し込むようにしましょう。

国が行っている保育士不足対策

保育士処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱという、保育士の賃金アップや労働環境改善のための施策があります。

保育士処遇改善等加算Ⅰは、職員の平均勤続年数や賃金改善、キャリアアップの取り組みに応じた人件費の加算を行う制度です。
保育士処遇改善等加算Ⅱは、就ける役職を増やすことで保育士がキャリアアップしやすいように改善し、そのうえでキャリアアップによる処遇改善に要する人件費を公定価格に上乗せして支払う制度です。

また、保育士の人材確保を図るため、従来は年1回の実施だった保育士試験は平成27年度より年2回実施されるようになりました。

自治体が行っている保育士不足対策

自治体が行っている施策としては、保育士宿舎借り上げ支援事業という宿舎を借り上げるための費用の補助を行う事業が実施されています。
保育士は給料が低いため一人暮らしがしづらいという問題を解決するための事業であり、補助金額は1人あたり月額82,000円が上限となっています。

そのほか、京都府では京都式保育人材キャリアパスというものを策定し、中堅層の職位や求められる能力を示すことで国の処遇改善に対応しました。
大阪府では潜在保育士に対して、保育所に勤めるための就職準備金として40万円を付与する施策が行われています。この準備金は、就職後2年間継続して勤務すれば返還免除となります。

まとめ:保育士の人手不足解消は潜在保育士の復活がカギ

保育士の人手不足解消には、潜在保育士の採用が欠かせません。国や自治体の制度を活用しながら、保育園の労働環境や労働条件を改善して潜在保育士の採用に近づけましょう。

よりよい人材を採用するには、環境や条件の改善だけではなく、アンマッチを防ぐ的確な採用活動や求人広告でのアプローチも必須になります。

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優秀な潜在保育士を採用し、長く働いてもらうため、ぜひとも「面接コボット for アルバイト」と「採用ページコボット」の導入をご検討ください。